異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

蛮神ガルーダ(後編)

「はじめようぞ、虫ケラ……わたくしの風でッ! 嵐でッ! 無残に散れッ!」

ガルーダはそう言うと、風のエーテルを身に纏いながら襲い掛かって来た。
私は、ガルーダ討伐に応じてくれた、トコチさん、ラムダさん、アーシアさんと共に、それを迎え撃つ。

ガルーダとの戦場は、周囲をガルーダの生み出した暴風に取り囲まれていた。
その風は当然魔力を含んでいて、触れるだけで大きなダメージを受けてしまう。
多分、ガルーダは、私達の逃げ場を塞ぐために、この風を用意したのだろうけれど、私達にとっては、邪魔者の横槍を気にしなくていい分、ガルーダとの闘いに集中出来る風だ。
何より、周囲で風が渦巻いている分、戦場での風はあまり強くなく、弓を扱う身としては、むしろ戦いやすい状況とも言えるのだった。

また、戦場には、元々祭壇としての役目を持たされたのであろう、積み石の塔が存在していた。
その塔が、ガルーダの風を防ぐ役目もしてくれたおかげで、時折、ガルーダが放つ暴風によるダメージも軽減することが出来た。
彼女を祭るための物が、彼女に敵対する私達の助けになるとは、なんとも皮肉な結果だなと思った。

 

「わたくしは空の覇者なるぞッ! この翼から逃れるすべなどないと知れッ!」

虫ケラと見下す私達を排除できず、あまつさえ、形勢が此方の方に傾きつつある状況に、我慢ならないと言わんばかりに、ガルーダの甲高い声が響く。
同時に、ググッと彼女の纏うエーテルが濃くなるのを感じた。

次の瞬間、全方位に飛ばされたガルーダの羽が、石の塔に突き刺さった。
見れば、突き刺さった羽には、いまだにエーテルが纏わりつき、小刻みに震えながら突き刺さった個所を浸食していく。

その時、なにか違和感を感じた。
羽を攻撃手段として使うのは理解できるのだけど、なぜ、私達に当て損なった羽に、エーテルを注ぎ込み続けているのだろう。
そう思っている間にも、羽は、突き刺さった岩を崩していく。

その時、私は、石の塔が、ガルーダの風の攻撃を弱めていた事を思い出した。
もし、盾となる石の塔を崩された状態で、強力な技を繰り出されてしまったら、そのダメージは今までの比では無くなってしまう。
そして、それを裏付ける様に、ガルーダは身に纏うエーテルの風を濃くし続けている。

「…!! 羽を!! 石の塔を壊させないで!!」

ガルーダの意図に気が付いた私は、慌てて羽を攻撃すると同時に、周りのみんなにも声を掛ける。
しかし、羽をすべて壊せた時、石塔は二つ壊されてしまっていたのだった。

 

「その首ッ! その四肢ッ! 引き裂いてくれるッ!」

そして、ガルーダの大技が繰り出された。
ガルーダの纏う風が一気に強まり、周囲の結界としていた暴風をも引きずり込みながら竜巻の様に渦を巻いていく。
やがて、全ての音が風に飲まれ、目も開けていられないほどの暴風に視界を奪われた。

暫くして、ガラガラとなにか崩れる音が聞こえたような気がした後、体が持ち上がるような感覚を覚えた。
そして、次の瞬間、強く地面に叩きつけられ、激痛に息が止まる。

「癒しの光よ! 間に合って!」

その時、トコチさんの声と共に、体の痛みが和らぐのを感じた様な気がした。

「…かはっ! ゲホッ ゲホッ」

次の瞬間、詰まっていた息を吹きかえすと同時に、激しく咽た。
顔を上げてみれば、みんな、同じように片膝を着いているものの、命に別状は無い様だった。
多分、石塔による風の軽減と、トコチさんの癒しの魔法が間に合ったお陰だろう。

 

「ギィィッ! 憎たらしいクソ虫めッ! 望みどおり、なぶってくれるわッ!」

大技を放ったにも関わらず、誰一人として倒れていない状況に、ガルーダが憤怒の声を上げる。
そして、周囲の暴風結界を狭めて来た。
どうやら、逃げ道を無くす魂胆みたい。

しかし、さっきの大技で、多くのエーテルを失ったらしいガルーダの攻撃は、激しさは増していたものの、単調で、威力も若干落ちている様だった。
その攻撃をアーシアさんが引き受け、その傷をトコチさんが癒し、範囲攻撃を避けながら、私とラムダさんでダメージを稼いでいく。

 

「お、おのれ……クソ虫がぁぁぁぁぁッ!!!」

そうして遂に、ガルーダは力を失ったように仰け反りながら、ゆっくりと地面に堕ちていったのだった。

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