異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

疾風の空力団

「見つけた。あれが、グイスリットさんが言っていた気球かな」

その日、双蛇党でイクサル族の襲撃があったと聞いた私は、その防衛戦の中で撃墜した、イクサル族の装甲気球の様子を探るため、北部森林へとやってきていた。
ハーストミル村から程近い、橋のすぐそばに墜ちていた気球の周囲にはイクサル族の姿は無く、既に逃げ去ってしまっている様だった。

「あれ……これは、気球の部品……?」

気球のすぐ傍に、見慣れない機械が落ちているのに気が付いた私は、それを拾い上げて見てみた。
たぶん、シドさん辺りに見せれば、何かしらわかるとは思うんだけど…。
とりあえず、他にも部品が落ちていないか調べるため、周囲を調べてみる事にした私は、プラウドクリークの方へ歩いて行ったのだった。

 

「……これは?」

調査を始めてすぐに、私は、森の中の一角に、荷物が積み上げられているのを発見した。
見た感じ、双蛇党や商人の荷物という感じでも無いし……そもそも、なんでこんなところに?

「げっひゃッァー! てめぇ、何してやがるッゥー!! そいつはッァ、オレたちが集めた気球の部品だッァ!」

荷物を調べようと手を伸ばした時、突如、声を掛けられた。
慌ててそちらの方を見れば、そこにはイクサル族が、私を威嚇するように立っていた。
二重に驚いた私は、慌てて弓を構え、臨戦態勢をとる。

「うっせぇぞッォ! 何を喚いてやがるッゥ! ヒトにガン垂れられたくれぇで、ガタガタ喚くんじゃねッェ!」

その時、別のイクサル族が姿を現した。
最初のイクサル族よりも一回り大きな体格をもつそのイクサル族は、警戒する私を見ると、騒ぐイクサル族を抑えつつ、私に話しかけて来た。

「姐ちゃん、ヒトの技師かッァ?……いやッァ、そうは見えねぇなッァ。見た感じ、カタギじゃなさそーだけどよッォ。姐ちゃんが持ってる、その装甲気球の部品は、オレたちが、やっとの思いで手に入れようとしたブツだッァ。だから、悪りぃが譲ってもらえねぇかッァ?」

そう言って、私に交渉を持ち掛けてくるイクサル族。
よく見れば、普段みるイクサル族とは羽の色の系統が違うみたいだけれど、どうやら性格も違う様で、力ずくで奪うつもりはないらしい。
そして、そのイクサル族は、交渉に応じる気があるのなら、この奥の柵の向こう側へとやってこいと言い残し、もう一人のイクサル族を引き連れて去って行ってしまったのだった。

……罠…かなぁ? ただ、どちらにせよ、イクサル族の伐採所よりもハーストミルに近いこの辺りに、イクサル族の基地があるのなら確認しておかないと……。

そう思った私は、イクサル族達が去って行った方へと、最警戒しながら進んで行ったのだった。

 

「これは…!?」

そこには、イクサル族の集落が存在していた。
ゲルモラ遺跡の隣、岩壁に隠れる様にして存在していた集落には、多数のイクサル族が過ごしていた。
集落の入り口のゲートをくぐった瞬間、周囲から、一斉に警戒の視線を向けられたものの、さっきのイクサル族が言い含めていたのか、襲い掛かられる事は無かった。
とは言うものの、やっぱり、居心地が良い訳は無く、私は戦々恐々としながら、奥へと進んで行ったのだった。

集落の中ほどまで進むと、そこには広い縦穴が掘られていて、底にはイクサル族の気球が備え付けられていた。
その気球は、まだ、製作途中の様で、技師と思われるイクサル族が、忙しなく作業をしているのが見えた。

ハーストミルからも、フォールゴウトからも近いこんなところから、もし気球を送り出されようものなら、その被害は尋常なものでは無いだろう。
これは、急いで双蛇党に知らせに走った方が良いかも……そう考えていると、気球の側に、さっきのイクサル族が立っているのが見えた。
とりあえず、もう少し情報を得る必要があると思った私は、そのイクサル族の元へと歩いて行ったのだった。

 

「……おぅおぅおーッゥ! 待ってたぜッェ、姐ちゃんよッォ! こんな所にアジトがあるなんて、ド肝抜かれただろッォ?」

そのイクサル族……たしか、さっき、セズルの親方って呼ばれていたっけ……は、私の姿を見ると、歓迎するように声を掛けて来たのだった。

「なんだッァ? 警戒してんのか、オメェッェ? ……確かにッィ、オメェらヒトと、オレたちイクサル族はッァ、森の覇権を巡って対立する宿敵同士ッィ……だがよッォ、オレたちは伐採所やナタラン入植地でッェ チョーシこいてる鳥頭どもとはッァ、ワケが違うぜッェ!? そもそも、ヒトと無駄な争いをするつもりもねぇしなッァ!」

訝し気な私の表情に気が付いたのか、ゼズルは私にそう言い放った。
どうやら彼らは、他のイクサル族とは目的が違うらしく、グリダニアとの戦闘を望んでいるわけでは無いらしい。
では、こんなところで何をしているかと言えば、目の前で製作が進められている気球の為の実験場なのだそうだ。

「オレたちはッァ、人呼んでエカトル空力団ッン! イクサル族の熟練職人が集まった、技術者集団よッォ! そして、ここはオレたちのアジト、エカトル実験場だッァ! オレたちエカトル空力団の夢はッァ、誰よりも高く空を飛ぶことッォ! 大空に羽ばたく翼を手に入れることだッァ!」

そう言って両手を広げながら高らかに宣言するゼズル。
たしかにイクサル族の祖先は鳥だと言われていて、腕にも退化翼があるけれど、彼らに空を飛ぶ力ない。
彼らは、どうやら、気球にその夢を託しているらしい。

「でも、なんで今さら気球の実験を? イクサル族の気球技術は、もう、確立されているんじゃ…?」

疑問に思った私は、ゼズルにその事を問いかけてみた。
実際に、既に空へ上がる手段を持っている彼らが、改めて実験研究を行う必要があるのだろうか。
勿論、改良研究の余地はまだまだあるのだろうけれど、それでも、他のイクサル族と別れてまで行う事なのかという疑問が残る。

「オレたちが目標にしてんのはッァ! そんなチャチなもんじゃねッェ!」

そう言って、ゼズルは目の前に置かれた設計図を指さした。

「オレたちが目指すのはッァ! 遥かかなたッァ! 高度5000ヤルムだッァ!!」

そして、彼の声は、実験場中に聞こえるかの如く、響き渡ったのだった。

 

2 Responses to “疾風の空力団”

  1. より:

    エカトル空力団の皆さんと出会ったんですね。
    クラフターのレベルを30以上にすると蛮族クエスト受けられますよー。
    シドさんに勝るとも劣らない情熱を持った、蛮族技術者集団です。
    ガレマール帝国とか古代アラグ帝国の飛空挺見たら、目を輝かせるのではなかろうか……。

    1. イーディス より:

      クラフターレベルは、まだ、木工師の15が最高なんですよね(;’∀’)
      でも、イクサル族の依頼を受けながらなら、サクサク上がっていくので、30もすぐに届きそうです(^▽^)/

      確かに、あの超技術みたら、テンション上がりそうですよね、セズル親方(笑

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