「結論から言うわ。サンクレッドは救えます!」
砂の家に戻り、エオルゼア都市軍事同盟からの連絡を待つ間、私達は、改めてみんなの無事を喜び、これからの事を話し合っていた。
そんな中、ミンフィリアさんが、黒い水晶を取り出しながら、そう宣言したのだった。
「アシエンは実体を持たない不死の存在……彼らは黒い水晶、闇のクリスタルを媒介にして、人に憑依する。言い換えれば、その闇のクリスタルを破壊すれば、きっと憑依は解かれる……そうすれば、サンクレッドは助かるはずよ」
みんなが闇のクリスタル(のレプリカ)をのぞき込む中、ミンフィリアさんが説明した。
そして、説明し終わった後、ミンフィリアさんは、私の目を真っすぐに見ながら、サンクレッドさんを、そしてエオルゼアを助けて欲しいと乞うてきたのだった。
もちろん、是非も無いと思っていた私は、力強く頷いて答えたのだった。
「三都市共同作戦の概要が届いたぞ!」
その時、アルフィノくんが大きな紙を手に、部屋に入って来た。
それはエオルゼア全土を記した大地図だった。
「今回の作戦の最終目標は、ウルダハ北に位置するカストルム・メリディアヌムにて調整中と思われる、アルテマウェポンを破壊することだ」
地図の中央の辺り、ウルダハの北を指さしながら、アルフィノくんが説明する。
作戦概要は、カストルム・メリディアヌムを孤立させるために、各国の部隊が周辺の各要塞を抑え、増援を送れない状況にしてから、同盟軍本隊でメリディアヌムを叩くと言うものだった。
その中で、私が率いるとされている冒険者による特別部隊は、まず、ガイウスの右腕と言われる、敵将リットアティン・サス・アルヴィナを排撃し、そして、同盟軍本隊とメリディアヌムの帝国軍が競り合っている中、内部に侵入し、中と外から、アルテマウェポンを無力化するというものだった。
「この作戦には、各国のグランドカンパニーを始め、リムサ・ロミンサの海賊諸派や、ウルダハの共和派など、総勢で、12の大きな組織が参加している。そこで、付いた作戦名がマーチ・オブ・アルコンズ……十二賢者の行進ってわけだ」
そう言って、アルフィノくんは、作戦の概要説明を終えた。
「あなたには、続けざまに、大きな戦いに参加してもらうことになる。準備ができたら、声をかけてね。そして、どうか、気を付けて。あなたにクリスタルの導きを……」
そう言ってミンフィリアさんは、申し訳なさそうにしながらも、希望を託すように、私に、再び頭を下げたのだった。
そして、マーチ・オブ・アルコンズは開始された。
私は、作戦の第一段階である、敵将リットアティンを倒すため、西ザナラーンにある帝国軍前哨基地へとで待機していた。
「作戦司令部より各隊。状況を確認、送れ」
同盟軍の先行部隊の隊長であるアダルベルト少闘士が、各所に配置させている隊員に、リットアティンの存在確認を促した。
しばらく、リットアティンの姿を確認出来ない報告が続いたけれど、何番目かの偵察からの報告で、リットアティンの存在が確認されたのだった。
「作戦司令部より各隊。先行部隊⻑のアダルベルト少闘士だ。この作戦がマーチ・オブ・アルコンズにおける、緒戦であり、その命運を左右する! エオルゼアの反攻は、ここから始まるのだ! 我々に失敗は許されない。総員、覚悟してかかれ!」
アダルベルト小闘士の言葉に、リンクパール越しにみんなの緊張感が伝わってくるような気がした。
私も、思わず生唾を飲み込みつつ、緊張に飲み込まれない様に気合を入れ直する。
「貴殿ら冒険者選抜部隊の突入に呼応し、我々は周辺で陽動作戦を行い、基地内の兵を散らす。あとは貴殿に託した! イーディス隊⻑! 頼んだぞ、リットアティンを討ちとってくれ! 貴殿の健闘を祈る!」
アダルベルト小闘士は、一旦、リンクパールから手を放すと、私にだけ聞こえる様に言ってきた。
私は、自分の後ろに、同じように待機している冒険者達に振り向いた。
カナさん、ラムダさん、ワキさん、アブソーブさん、アルシエルさん、ベルさん、メグさん。
みんな、同盟軍によって選抜された熟練の冒険者ばかりで、正直、私なんかが隊長で良いのかと、すごく恐縮してしまう……とはいえ、これが私に与えられた役目だというのなら、覚悟を決めるしかない。
私は、再びアダルベルト小闘士に向き直ると、ゆっくりと頷いた。
それを見て、準備完了の意志と受け取った小闘士が、ふたたび、リンクパールに指をかけ、鋭く声を上げた。
「よし、状況開始!」
その声と共に、私達は、前哨基地へ突入したのだった。