「……うにゃ~」
暖かい日差しに心地よい眠気を感じた私は、その誘惑に抵抗することなく横になった。
横になった風景を眺めながら、遠くで囀る鳥の声に耳を傾ける。
ここは、外地ラノシアにあるニーム浮遊遺跡。
第五星暦時代に、この辺りにあったと言われる、海洋都市ニームの遺跡を見ることが出来る、不思議な場所だ。
「なんか、こうして知らないところに足を延ばすのも久しぶりだな~」
初めてグリダニアを訪れた時は、ただ、お姉ちゃんを探すために、そして世界を知るためという、漠然とした目的しか持っていなかった。
それが、いつの間にか、蛮神問題やガレマール帝国の戦い、そして暗躍するアシエンとの対決など、エオルゼアをめぐる大きな戦いの中心に居た。
別に、そうなってしまったことを後悔しているわけでは無いけれど、やっぱり、思い返してみると、今でも信じられないぐらい激動の日々だった。
そういえば、アルフィノくん達とは、その時のチョコボキャリッジで同席していたんだね。
あの時は、すごく寡黙な二人という印象だったから、追悼式典で再会した時の印象と全然違っていて、全然気が付けなかった。
その後、アルフィノくんの妹のアリーゼちゃんの姿は見ていないけれど、彼女は元気にしているのかしら。
それから、多くの人に出会い、助けてもらいながら冒険を重ねていくうちに、グリダニアの大使に選ばれて、各国の首脳に直接面会に行ったりして、あっと言う間に世界が広がって行った。
その頃は、まだ、世界を覆う、蛮神問題や難民問題、ガレマール帝国の問題なんかは、どこか自分に関係のない話の様にも感じていたなぁ。
そして、ミンフィリアさん達、暁の血盟のみんなとの出会い。
最初は、私にできることがあれば……という程度のちょっとした協力関係だと思っていたのだけれど、そこで告げられた「超える力」の存在によって、私の役目がガラリと変わって行った様な気がする。
……超える力っていったい何なのだろう。
ミンフィリアさんは、私の持っている力は、心の壁、記憶の壁を超える力だと言うけれど、なんだか、それだけでは無いような気がしている。
ハイデリンとの邂逅も、この頃だった。
今思えば、彼女の声だけは、グリダニアに来る途中に夢の中で聞いていた。
あの夢が、ハイデリンが見せたものなのか、それとも超える力が見せたものなのかは判らないけれど、夢の中の出来事は、現実のものとなった。
アシエン・ラハブレアとの決戦の後、ハイデリンの声は一度も聞けていない。
未だに光のクリスタルは私を護ってくれているのが感じられるし、ハイデリンの存在も残っているから、そんなに心配はしていない。
ミンフィリアさんは、少し、不安に感じているみたいだったけれど。
「…んーっ」
私は、立ち上がると、気分を変えるためにぐいーっと伸びをした。
高地特有の爽やかな空気を、胸いっぱいに吸い込んでから、ゆっくりとはき出す。
よく判らないことも、難しいこともいっぱいあって、考え始めるとキリが無い。
お姉ちゃんなら、きっとこういう時、よーわからんことは気にすんなって言うだろうなー。
リンリン…
その時、リンクパールが涼やかな音を立てた。
耳元に手をやって、リンクパールを操作すると同時に聞こえてくる、友人の声。
「はい、こんにちわ! え? ……うん……うん! 行けるよ! ……うん。それじゃ、また後で……はい」
色々な出会いがあって、様々な事件に関わって、そして今の私がいる。
この先も、きっと色々な人に出会って、様々な事件や問題に関わって行くことになるのだろう。
それは、ちょっとドキドキすることだけど、それ以上にワクワクする事。
それこそ、冒険者になった最大の目的で理由だもの。
「よしっと!」
私は、勢いをつけて立ち上がると、待ち合わせの場所に向けて、駆け出したのだった。
まだ見ぬ世界を見に行くために!