「ミンフィリア。君の探し人を連れてきたよ」
フ・ラミンさんを連れた私達は、砂の家に戻ると、真っ直ぐにミンフィリアさんの執務室へと入った。
そして、開口一番、アルフィノくんは、そう言い放つと、驚きの表情を浮かべるミンフィリアさんに、後ろに控えていたラミンさんを示したのだった。
「…まさか、ラミン!?」
一瞬、戸惑いを見せたミンフィリアさんの瞳が、瞬く間に潤み始める。
「アシリア…」
口元を抑え、茫然としてるミンフィリアさんの本名を呼びかけながら、ラミンさんは、彼女にやさしく手を差し伸ばす。
やがて、二人は、これまでの想いをぶつけるかのように、強く抱擁を交わしたのだった。
「いままで、いったいどこに……ずっと探していたのよ」
少し落ち着いたミンフィリアさんは、フ・ラミンさんに今までどうしていたのかを聞いていた。
どうやらラミンさんは、第七霊災の後、帝国に追われていたらしく、身を潜めながら各地を転々としていたらしい。
「……本当に心配してたんだから」
そう言いながら、目じりの涙を払うミンフィリアさんに、ラミンさんは小瓶を取り出しながら、それを彼女に手渡した。
「もうすぐ、私たちが出会った記念日。だから、これを渡しに来たのよ」
それは、淡い色をした香水の入った小瓶。
ミンフィリアさんが好きだというこの香水こそ、ラミンさんが危険を冒してまで花を摘み、準備していたプレゼントだった。
「これはセルセトの香水……わたしがこの香りを好きだったの、覚えていてくれたんだ」
「うふふ、今も付けているものね。冒険者さんから、わずかにうつり香がしたの」
そういって、ラミンさんが微笑む。
そうか。ミンフィリアさんがいつも付けている香水は、セルセトの香水っていうんだ…。
そして、それは、2人にとっても思い入れのあるものだったみたい。
「それに、これ」
香水の小瓶と共に、フ・ラミンさんは小さな石をミンフィリアさんに手渡した。
それを見て、ミンフィリアさんは更に相好を崩した。
「これは……猫目石……まだ持っててくれたんだ」
それは、ウルダハで孤児となったミンフィリアさんに、ラミンさんが生きる術として覚えさせた、採掘師として初めて掘り出した原石なのだという。
それを、ミンフィリアさんは、それまでのお礼を込めて、ラミンさんに贈ったのだそうだ。
「だからこそ、あなたに持っていてほしいの。真の平和に向かって新たに歩みだした、あなたに」
「…数年ぶりにあなたを見て、改めて実感したわ。あなたは、かつて私たちができなかったことを成し遂げようとしている」
そう言って、フ・ラミンさんは、猫目石を載せるミンフィリアさんの掌を、そっと両手で包み込んだ。
「私の母としての役目は終わったのね。アシリア……あなたはもう、立派に独立した女性よ」
そう言いながら、優しい笑顔を向けるフ・ラミンさんの顔をしばらく見つめ返した後、ミンフィリアさんは頷き、私達の方へと向き直った。
「……アルフィノ。暁の本部移転計画を進めましょう。ラミンが言ってくれたとおりだわ。わたしたちは、中立の立場でエオルゼアを救済し続ける……わたしたちにしかできないことをしましょう」
そうして、砂の家の移転計画は、本格的にスタートしたのだった。