「…そっか。もう、星芒祭の時期なのね…」
久しぶりにグリダニアへと戻って来た私は、街を煌びやかに彩ってる飾りつけを、眺め歩きながら呟いた。
こうして、グリダニアの、エオルゼアの地を歩くのは、随分と久しぶりな気がする。
実際、魔導城での帝国との決戦の後、近況報告を兼ねて、実家に戻っていたので、数か月ぶりなのだけれど。
本当は、報告を済ませたら、すぐに戻ってくるつもりだったのだけど、なんだかんだと長居してしまっていたのだ。
そういえば、実家で過ごしいてる間に、お姉ちゃんからの手紙が届いた。
5年も音沙汰なかった割りに、ただ簡潔に、東方に行ってくるとだけ書かれていて、思わず言葉を失ってしまったけれど、お姉ちゃんらしいと言えばらしい内容に、家族一同、苦笑いを浮かべていた。
まぁ、元気そうなのは確認できたから、とりあえず安心かな。
ただ、この時世に、東方に行くのは大変だと思うのだけど、どうやって向かったんだろう…?
交易商人に知り合いでも作ったのかしら。
「あ! 冒険者さん!」
物思いに耽りながら、ミィ・ケット音楽広場に差し掛かった時、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
その声の主を探してみれば、広場の中央で、手を振っている女性が見える。
「ああ、冒険者さん! また、お会いできるなんて!」
そう言いながら感極まった様に、私の手を握ってきたその人は、去年の星芒祭の時にお世話になった、星芒祭実行委員長のアムさんだった。
どうやら、今年も彼女が実行委員長を務めているらしい。
「実は…その、少し相談に乗って頂きたいことがありまして…」
そう言いながら、眉根を下げながら申し訳なさそうに話し始めるアムさんに、私は、気にせず事情を説明して欲しいと、言葉を促したのだった。
「ご存知かと思いますが、星芒祭は子供の為の祝祭。わたくしたち実行委員は、こどもたちに楽しんで貰おうと、色々な催しを企画していたのですが…」
アムさんが言うには、どうやら、その催しを邪魔するように、盗難事件が頻発していて、人員の多くをそちらの対処に回さざるを得ない状況になっているらしい。
このままでは、星芒祭を成功させることが難しいため、手を貸して欲しいとの事だった。
もちろん、ふたつ返事で手伝いを引き受けた私は、ベントブランチ牧場にいるという、星芒祭実行委員さんの元へと向かったのだった。
「あそこかな?」
ベントブランチ牧場に着いた私は、北側の門付近に、星芒祭の実行委員の恰好をした人を発見した。
たぶん、あの人が、アムさんの言っていた、ベーンフェルドさんかな。
「ん? お前さん、冒険者だな。俺に何か用か?」
近づいて来た私を訝しがるベーンフェルドさんに、私は、アムさんから依頼を受けてきた事を説明すると、彼は、助かったとばかりに安堵の表情を浮かべたのだった。
ベーンフェルドさんの話だと、どうやら、星芒祭の飾りが盗まれる事件が頻発しているらしい。
その事も許せないけれど、それ以上に、飾りつけを手伝ってくれた子供達の落胆がひどいみたい。
それで、彼らをなんとか慰めたいところなんだけど、事件の方の調査協力やなんやらで、手が足りないらしい。
「なんとか、子供たちを元気づけてやってくれないか」
そう頼んで来るベーンフェルドさんに、私は、任せてと胸を叩いたのだった。
「それじゃ、フェルカド。よろしくね」
そう言って、私は、星芒祭の衣装を身に付けたクマ、フェルカドの背中を軽くたたいた。
ベーンフェルドさんの後ろに居たクマたちは、子供たちを喜ばせるために芸を仕込まれたクマだった。
そして、子供たちを元気づけるというのは、こうして、クマを操って、子供たちの元へと行き、芸を見せる事だったのだ。
「へへっ。相性も問題なさそうで安心したぜ。それじゃ、俺は、盗難事件の捜査に戻るとするか」
そういって、ベーンフェルドさんは、私と、フェルカドを残して、残り二頭と共に、走って行ったのだった。
それを見送った私とフェルカドは、子供達の元へと向かったのだった。
フェルカド達が仕込まれた芸は、プレゼントボックスの様に見える花火を、子供たちの目の前で破裂させて驚かせるというものだった。
花火は、地面に叩きつけられると同時に、軽快な音と共に破裂し、周囲に、キラキラと輝く星や花を散らばせるものだった。
「うわー! びっくりした! この熊さん、こんなスゲー芸も出来るんだ!」
「熊さんありがとう!」
その芸を見た子供たちは、驚きと共に、笑顔と元気を取り戻してくれた様だった。
手応えを感じた私達は、そのまま、次の子供のところへと向かったのだった。
「…あ、熊さんと冒険者のお姉さん…。凄い芸だね。見せてくれてありがとう。……はぁ」
しかし、その手応えと自信は、次の少年の前で、脆くも崩れ去ってしまった。
その子は、一瞬、驚きに大きく目を丸くしたものの、次の瞬間にはその表情は曇り、重い溜息までついてしまっていたのだ。
そんな少年の様子に、フェルカドが心配そうに鳴き声を上げる。
「慰めて…くれるの? ありがとう。熊さんやさしいね……でも、やっぱり……」
フェルカドの気持ちが通じたのか、少年はぎこちなく笑みを浮かべたものの、やはり、重く沈んだ気持ちが表情に浮き出ていた。
私は、フェルカドの背から降りると、少年に、何があったのかを聞いてみる事にしたのだった。
お久しぶりです。
今年の星芒祭は熊さんマウント大人気でしたねー。
初日に参加したものの、あまりの大人数に動けなくなり(処理落ち)、翌日の朝にクリアしました。
更新楽しみにしてます。
お久しぶりです!
クマさんマウント、とても可愛くて、お気に入りです!
でも、出来れば一番大きな子に乗ってみたかった…w
次の更新は、何時になるか判りませんが、また、宜しくお願いします!