「よし、何とか潜り込めたな」
カストルム・メリディアヌムの高出力魔導フィールドをすべて解除した私達は、エンタープライズにのり、帝国軍司令部、そしてアルテマウェポンが調整されていると思われる工房を内包する、魔導城プラエトリウムへと乗り込んでいた。
今回、プラエトリウムへと突入に同行してくれたのは、ラムダさん、ゾルさん、オカさん、エレナさん、ベルさん、ヒロさん、サヴァさんの7名。
うち5人は、カストルム・メリディアヌム攻略からの同行メンバーなので、意志疎通やタイミングなどは安心して任せられる。
もちろん、新しく参加してくれた2人も実力のある冒険者なので、なんの心配も要らない。
そして、シドさんも、私達のサポートをするために同行する事になっている。
もっとも、シドさんは、直接、ガイウスに文句を言いたいからって気がしないでもないのだけど…。
「ここの最深部にあるアルテマウェポンの破壊……それが、俺たちの目標だ。何としても成功させる! 行こうぜ、イーディス! アルテマウェポンをぶっ壊して、お空のお星サマに変えてやるんだ!」
気合十分なシドさんはそう言うと、先頭を切って、プラエトリウムの扉を開いたのだった。
プラエトリウムの内部は、驚くほどに、帝国兵の姿が少なかった。
恐らく、ここまで敵に侵入される事を想定していないという事なのだろうけれど、流石に、飛空艇で乗り付けるという目立つことをしているのに、警報のひとつも鳴らしていないというのは、逆に罠なのではと訝しんでしまう。
もっとも、例え、罠が待ち構えていたとしても、私達は最深部まで強行突破しなければならないので、あまりやる事に変わりはないのだけれど。
ドゴッッ!!
魔導ターミナルを使って下の階層に降りた時、突如目の前の壁が爆風で吹き飛ばされたのが見えた。
近づいてみると、行き止まりとなっていた通路の横に、大きな裂け目が出来ていて、そこから外壁を通じて、更に奥へと進むことが出来そうだった。
「偶然……? それともわざとかしら……」
その裂け目から外を伺いみると、どうやら、地上からの砲撃が行われているらしく、次々に砲弾がオレンジ色の軌跡を残しながら飛んでくるのが見えた。
このままここに居ても、魔導城ごと吹き飛ばされると判断した私は、みんなに砲撃に注意するように伝えると、外へと走り出たのだった。
砲弾の雨をかいくぐりながら、私達は、外壁の上を奥へ奥へと進んで行った。
途中、帝国兵が待ち受けていたものの、慣れない足場の上に無差別な砲撃に晒され、思う様に動けなくなっている様で、私達の足止めにもならなかった。
やがて、再び壁に空いた穴から、内部へと戻ることが出来た私達は、砲撃で崩壊した通路を進みながら、更に下の階層へと降りることが出来たのだった。
そうして、進んで行った先で、私達は軍団長室とプレートに書かれた扉に辿り着いた。
入り口を守っていた帝国兵を蹴散らし、扉の中へと侵入した私達を待っていたのは、見覚えのある人影だった。
「なっ……ガイウス!?」
その姿にシドさんが驚きの声を上げると、その人影…ガイウス・ヴァン・バエサルは、ゆっくりとこちらに振り向いたのだった。
「遅かったではないか、シド。待ちくたびれたぞ。うぬに伝えなくてはならないことがある……ミド・ナン・ガーロンドのことだ」
そう言いながら、シドさんに語り掛けるガイウス。
どうやら、シドさんのお父さんに付いての話らしく、親子の確執が誤解であった事を伝えようとしているみたいだった。
「まさか、それを伝えるため……? 俺たちを呼び込むために、あの砲撃で床を割ったのか!?」
シドさんはそう言って、ガイウスに問いかけた。
ここまで、行く先々の壁や床が、都合よく砲撃によって破壊されていると思ったら、どうやら、ガイウスが私達を誘い込むために指示した事だったらしい。
「……どうだ、シド。ガレマールに、わしのもとに帰ってこぬか。ミドの後を継ぎ、筆頭機工師として」
シドさんの問いかけには答えず、ガイウスはシドさんに、自分の元へと戻ってこいと提案してきた。
当然の様に、シドさんにそれを断られたガイウスは、今度は私に、軍門に下れと提案してくる。
その言葉に、リットアティンが言っていた、ガイウスは身分に関係なく、実力があれば等しく重用するという言葉を思い出した。
勿論、あの時と答えは変わらず、私は首を横に振って答えたのだった。
「そうか、残念だ……ならば、我が力で抑えるのみよ……シド。逃げるなら、最後まで逃げ切ってみせよ」
ガイウスはそう言うと、後ろにあったパネルを操作した。
その次の瞬間、私達の後ろから魔導コロッサスが姿を現す。
そして、私達が魔導コロッサスに気を盗られている間に、ガイウスはエレベーターを起動させ、姿を眩ましたのだった。
ガイウスの後を追うには、すぐにでもエレベーターを呼び戻す必要があるけれど、先に、魔導コロッサスを排除しなければそれも儘ならない。
そう判断した私達は、魔導コロッサスを排除すべく、戦いを始めたのだった。