「逃げられちまったか……ガイウス……あんたは……」
魔導コロッサスを倒した後、シドさんが急いでガイウスを乗せていったエレベーターを呼び戻したけれど、既に、その姿はそこには無かった。
ガイウスの言葉に思うところがあったのか、シドさんは複雑そうな顔で、小さく呟いていた。
「ここには、要塞内のさまざまな場所や人を監視、追跡する装置があるようだ」
考えを振り払う様に、小さく頭を振ったシドさんは、沢山の並んだ計器類を見ながら、私達に言った。
どうやらここに残って、私達のサポートをすると同時に、ガイウスを止める手段を考えるつもりらしい。
流石に、敵地のど真ん中にひとり残していくのは心配だったけれど、どうやら、内部からこの指令室のロックもコントロール出来る様で問題はない様だった。
「お前は、このままヤツを追ってくれ。何かあったら、リンクパールに連絡を入れる……気を付けてな」
そう言うシドさんを残して、私達はエレベーターで、さらに下の階層へと降りて行ったのだった。
ガイウスを追って、下の階層へと降りた私達は、帝国兵や魔導兵器を倒しながら、通路を進んで行った。
相変わらず、敵の拠点中枢とは思えない程度の戦力しか配備されていなかったけれど、これもガイウスの意図したところなのかしら。
しばらく進んで行ったところで、隔壁が何かの結晶で固められているのが見えた。
硬質なクリスタルの様にも見えるそれは、隔壁にびっしりと張り付いていて、ちょっとやそっとの事では開くことは無さそうだった。
「そいつを開けるには、魔導アーマーが必要だな……別の道を進んで、魔導アーマー駐機庫を目指すんだ」
その時、シドさんからリンクパールで連絡が入った。
どうやら隔壁を開くために、この先にある魔導アーマーの駐機庫から魔導アーマーを奪取して、隔壁ごと砲撃で吹き飛ばそうという事みたい。
「その辺りに、魔導アーマーの認証装置があるはずだ。そいつで搭乗員登録をしたら、魔導アーマーを起動するんだ……おっと、こいつは……ハハッ、面白い機体を見つけたぜ」
リンクパールから、シドさんの愉快そうな声が聞こえてくる中、私達は指示に従って魔導アーマーの搭乗員登録を済ませ、駐機庫へと向かったのだった。
「あれっ!?」
駐機庫に入り、数多くの魔導アーマーが並ぶ中、私は、見覚えのあるマークの書かれた機体を発見した。
それは、ミンフィリアさん達を救い出すため、カストルム・セントリへと潜入する際に鹵獲した魔導アーマーだった。
あの時、私達を逃がす隙を作ってくれたこの子を、残して去ってしまって気になっていたのだけど、こんなところに居たなんて。
「俺だ、シドだ。どうやら、みつけたようだな!」
どうやら、シドさんは、この子がここに置かれている事を知っていたみたい。
よく無事に残っていたもんだと、嬉しそうに感心する声が聞こえて来た。
「よし、魔導アーマーは手に入った。そいつの砲撃で、さっきの隔壁をぶち破ってくれ」
そう言って、シドさんはここから一旦外へと出て、外壁沿いに進めば、さっきの隔壁のところに戻れると指示を送ってくれた。
私達はそれに従い、各々、魔導アーマーを操縦しながら、さっきの塞がれた隔壁へと向かっていったのだった。