「ロウェナさん…ですか?」
とある日の事、砂の家を後にした私は、その近くで、冒険の場の情報をよく教えてくれる、ネドリックさんと話していた。
ネドリックさんは、いわゆる情報屋というよりは、情報を提供する代わりに、その冒険談を聞くのが楽しみな様で、その日も、以前に教えてもらったダンジョンの様子などを報告していたのだった。
そして、その会話の中で、優れた冒険者は、優れた武具を持つべきだという話になったのだった。
「そうだ。古代アラグの遺物みたいな珍品と引き替えに、上物の武具を融通してくれる商人さ。今はたしかモードゥナ地方のレヴナンツトールで店を構えているはずだ」
そう言えば、レヴナンツトールには、ロウェナ記念会館という名前の建物があったような……あの館の主さんの事なのかしら。
とりあえず、ネドリックさんに情報のお礼を告げると、私は、レヴナンツトールへと向かったのだった。
「ネドリックの知り合いですって? ということは、あんた、それなりの腕なんでしょ?」
ロウェナさんは、自分の名前を冠した建物の奥で、待ち構えるかのように立っていた。
ネドリックさんの紹介だと伝える私を、まるで値踏みするかのように私を見据えた彼女は、そう言うと、ゲロルトさんという鍛冶職人さんの事を教えてくれた。
なんでも、かなりの凄腕の持ち主らしいけれど、性格に難がある様で、ロウェナさんからもお金を借りたまま行方をくらましていたらしいけれど、最近、ハーストミルに姿を現したらしい。
「もし興味があるのなら、あたしの債権書を譲ってあげる。これさえあればゲロルトを働かせる口実は作れるだろうね」
そう言って、一枚の紙を手渡してくるロウェナさん。
突然訪れた私に、なぜ、そこまで親身になってくれるのか疑問だったけれど、私は、その好意をありがたく受け取っておくことにしたのだった。
「貧乏臭せぇ冒険者が、なンの用だ? あぁン?」
ハーストミルにある鍛冶場で、ただひたすらに、ヤカンを打ち出し続けている鍛冶師。
それが、ゲロルトさんだった。
ロウェナさんの言うとおり、決して、上品な性格をしているわけでは無い様で、声を掛けて早々に、凄まれてしまったのだった。
「えと……ロウェナさんの紹介で、ゲロルトさんなら、優秀な……それこそ、失われた古の武器すらも復元して見せるだろうと言われまして……」
ロウェナさんの名前を口に出した瞬間、ゲロルトさんの動きがピタリと止まった様に見えたのは、気のせいかしら。
「……な、なンでオレが、見ず知らずのテメェに、そンなことを……」
そう言って、再びやかんを叩き始めたゲロルトさんだったけれど、その叩く音は、先程までとは違い、なんだかリズムが狂ったような音を出している。
「あ。そういえば、ロウェナさんから、こんなものを預かってます」
その時、ロウェナさんから預かった債権書の事を思い出した私は、それを取り出すと、ゲロルトさんに見える様に開いて見せた。
それを目にした瞬間、再び動きがピタリと止まったゲロルトさんは、今度は、その剃り上げた頭皮から大量の汗を噴出させながら、紙を凝視していた。
「ま、まさか、それはロウェナの債権書! なンでそれを……いや、待て、ゼニはもうねぇ! 見ての通り、酒代のツケを払うため、ヤカン作りをさせられているくれぇなンだ! 当代随一の武具職人とまで呼ばれたゲロルト様が、酒場で使う真鍮のヤカンだぞ? わかるか、この屈辱ッ!」
一呼吸おいて、ゲロルトさんは債権書を近づけるなとばかりに手を上げながら、早口で捲し立てた。
なるほど…なんで、武器職人が日用品を作っているのだろうと思ったけれど、そう言う事だったのね…。
「……チッ、仕方ねぇなぁ。古の武器とやらを作ってやらンでもねぇから、そのおっかねぇ、紙切れはしまってくれよな? な?」
そうして、ゲロルトさんは、渋々、武器製作を引き受けてくれたのだった。
そして、これが、それから長い付き合いになる、ゲロルトさんとの最初の出会いだったのだった。
(´・ω・`)結局、お姉さんと合えたのかが気になりまくるよー。
(´・ω・`)イーディスちゃん休止かなー。今まで本当に楽しいブロクありがとうだよー。
結局、休止状態になってしまっていて、ごめんなさい(´・ω・`)
纏まった時間が取れないのと、筆がなかなか進まない状態が続いていますが、いつか、更新再開できたら、また、見に来て貰えると嬉しいです。