異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

人を惑わす歌声

シドさんが思いついた、蛮神ガルーダの暴風壁を突破する方法とは、偏属性クリスタルを使うというものだった。

偏属性クリスタルは、第七霊災の折、大地から噴き出したエーテルが固まったもので、透き通るような水色ではなく、赤焼けた橙色をしている。
そして偏属性クリスタルには、特定のエーテル属性を別のエーテル属性に変換する特性がある。
シドさんは、それを使って、ガルーダの暴風壁の属性を炎に変えて、エンタープライズの推進力に換えようという算段の様だった。

ただ、偏属性クリスタルの変換する属性は、各地にあるものごとにバラバラなため、風から炎に換える偏属性クリスタルがどこにあるかは判らない。
私は、キャンプ・ドライボーンにいるエーテル学者のランベルタンさんを訪ねると、その知識と協力を得て、偏属性クリスタルの探索を開始したのだった。

 

「……ふゥゥむ、このクリスタルは、土属性を火属性に変換するクリスタルだねぇ。ざんね~ん」

東ザナラーンのバーニングウォールで、偏属性クリスタルを採取してきた私は、それの属性を見てもらうため、再び、ランベルタンさんの元を訪ねていた。
しかし、私が採取してきた偏属性クリスタルは、目的の属性変換を持つものではなかったのだった。

「ン、まてよ?  このクリスタルを使えば……つまり土を火に換えるワケだからして……ならば風を土に換えるクリスタルがあれば、万事解決するってことなんじゃないかな?」

肩を落とす私を他所に、採取してきた偏属性クリスタルを眺めていたランベルタンさんは、閃いた様に、声を上げた。
どうやら、複数の偏属性クリスタルを連鎖させることで、風を炎に換えることを実現させようという事みたい。

そうして、私は、偏属性クリスタルを求めて、各地を巡ることになったのだった。

 

 

次に、偏属性クリスタルを求めて訪れたのは、西ラノシアのエールポートだった。
ここにある、シリウス大灯台にある偏属性クリスタルを採取しに来たのだった。

しかし、シリウス大灯台のある幻影諸島では、いま、幽霊騒ぎが発生していて、その影響で渡航制限が掛けられている状態だった。
なんとか、幻影諸島に渡る方法がないか動いていると、ミミドアさんという鍛冶師の人に出会ったのだった。

 

「おはんもあの島へ渡りたいのか?」

ミミドアさんは、黒渦団にシリウス大灯台の修繕を依頼された技師さんで、私が、幻影諸島に渡る方法を探している事を知ると、なんと技師向けの特別渡航許可証を譲ってくれるという。
その代わり、冒険者である私に、幻影諸島で起きている幽霊騒ぎを解決する手伝いをして欲しいらしい。
その条件を了承した私は、ミミドアさんに先行して、幻影諸島に渡ったのだった。

幻影諸島に渡った私は、状況の確認を兼ねて、シリウス大灯台の灯台守さんに会いに行った。
彼に、偏属性クリスタルを採取したい事も伝えたけれども、灯台は、第七霊災で大破してから立ち入り禁止の状態が続いているのだという。

幽霊騒ぎ(灯台守さんが言うには、幽霊の正体は魔物らしい)を解決する事を条件に、偏属性クリスタルを採取してきてくれるという灯台守さんに、採取をお願いした私は、島の奥地へと向かったのだった。

そして、島で、魔物騒ぎの情報を集めた私は、船の墓場と呼ばれる浜で、夜になると、怪しい歌声と共に魔物が姿を現すという情報を掴んだのだった。

 

「謎の歌声で巷に亡霊が溢れかえる……やはり、そうじゃったか……」

ミミドアさんと合流した私は、それまでに集めた幽霊騒ぎの情報を、彼に伝えた。
どうやら、ミミドアさんは、以前にも同じような事件に出くわした事があるらしく、その元凶の事も知っている様だった。

「美しか歌声で船乗りを惑わせ、船を暗礁に導いて沈没させる……伝説の魔物セイレーンの仕業に違いないぞい!」

セイレーン……その魔物の名前だけは聞いたことがある。
ミミドアさんの言うとおり、歌声で人を惑わせ、人を不幸にさせる魔物。
たぶん、セイレーンが奏でる歌は、私達、吟遊詩人の使う戦歌と同様のものなのだろうと思うけれど、知っているだけに、その呪歌ともいえる歌の危険性は、容易に想像が付いた。

「イーディスどん。これを」

そう言って、ミミドアさんは、小さな何かを手渡してきた。

「ミミドア式耳栓じゃ。これがあれば、セイレーンの歌声に惑わされることはないぞい」

そう言って、ミミドアさんは、ニカッと笑みを浮かべたのだった。

 

その夜、船の墓場と呼ばれる浜辺で、私達は、セイレーンが現れるのを待った。
なかなか、セイレーンは現れず、もしかしたら、噂は外れだったのではと思い始めた頃、何処からともなく、微かに歌声が聞こえて来た。

「!!」

見れば、いつの間にか、海上に竪琴を奏でながら浮かぶ、魔物の姿があった。
微かに聞こえてくる歌声はとても美しく、魅力的で、吟遊詩人としては、つい、その歌声に耳を傾けたくなってしまう程だった。

「ほ、ほんとに出おったぞい! あ、あれが、伝説の魔物セイレーンじゃ!!」

ミミドアさんも、セイレーンの姿に気が付いた様で、彼女を指さしながら声を上げた。

「……あの時の事件と同じならば、奴は海上から動かず、下僕の亡霊たちをけしかけてくるはずじゃ……イーディスどん、あとのことは任せたぞい!」

そう言って、安全な場所まで下がるミミドアさんを庇う様に、私は、セイレーンと対峙したのだった。

 

また 哀れな罪人が迷い込んだ 私を求めて…… いいわ 貴方の愛に寄り添ってあげる 私の歌で永遠に
可哀想に貴方には 私の愛が届かないだなんて いいわ ならば罪人のまま亡者と踊れ 私の歌で延々と
愛は亡者となりて朽ち果てず とこしえに朽ち果てず 愛を求め 私を求め 踊り続ける運命の中で……
哀れな罪人を駆り立てるは 憎悪か絶望か 踊り続ける宿命の中で 罪人の想いは消えていく……
愛の歌声は潮風に乗り 亡者とともに届けられる 私を愛しすぎた 罪深き貴方のもとへ……
恋に落ちて 愛に溺れ 哀れな罪人となった…… 貴方の体は血を流し 貴方の心は血を啜る
愛しすぎた私は 愛の歌を強く奏でる 哀しすぎた貴方を 最期に……
時は終焉を告げ 亡者の舞踏会も幕が下りる…… いつかまた逢いましょう 愛の輪廻の輪の中で……

 

セイレーンは、ミミドアさんの言葉通り、離れた海上から動こうとはせず、ただひたすらに歌を奏でていた。
その歌に呼応するかのように、亡者が、次から次へと海から這い出てくる。

私は、亡者を殲滅しながら、つい、セイレーンの歌に耳を傾けてしまっていた。
ミミドアさんの耳栓のお陰で、呪力的な効果を受けずに済んでいたからというのもあるけれど、正直、同じ詩を繰る者として、聞き逃す事が出来なかったのだ。
もし、この歌声が、人を不幸に惑わすものでなければ、きっと多くの人を幸せにできたのに。
私は、そんなことを考えてしまっていたのだった。

 

セイレーンに呼び出された亡者を全て退けた後、彼女は、直接襲い掛かってくるでもなく、ミミドアさんの言う通り、そのまま姿を消した。
セイレーンに、多くの鍛冶師仲間を奪われた過去があると言っていたミミドアさんは、捕り逃してしまったことを悔しがっていたけれど、これで、シリウス大灯台の修繕が進められると喜んでいた。

そして、偏属性クリスタルの採取をお願いしていた灯台守さんから、クリスタルを受け取った私は、幻影諸島を後にしたのだった。

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