「見えて来た……あれが、蛮神ガルーダの暴風壁……」
エンタープライズで北上を続け、クルザス地方の東部へと差し掛かった私の視界に、巨大な雲が渦を巻いているのが見えた。
その巨大な嵐の中心では、風のエーテルが視認できるほどに色濃く渦巻いている。
「突っ込むぞ!! 掴まれ!!」
暴風壁の存在を確認したシドさんが、エンタープライズの機首を、その暴風壁へと向けた。
そして、シドさんの声と同時に、一気に下降していくエンタープライズ。
まるで、真っ逆さまに落ちているかのような錯覚を覚えながら、私は、振り落とされない様に、必死にエンタープライズにしがみ付いていたのだった。
「なんとか、風壁は無事に突破できた。目的の蛮神ガルーダは、恐らくこの門の先……いよいよ決戦の時がきたようだ」
暴風壁を突破した私達は、広場の様な所に降り立った。
周囲を渦巻く嵐に取り囲まれているものの、ここは、それほど風も強くなく、懸念てしてたガルーダの迎撃も無かった。
私達は、武器を構え、臨戦態勢を整えると、ゲートの先へと突入したのだった。
「こしゃくなッ……! わたくしのギガメスの大風壁を突破しおるとはッ……愚かなクソ虫めがッ! クソ虫にはクソ虫のッ、分限があることも忘れたかッ!!」
ゲートをくぐった私達を出迎えたのは、ガルーダの上品とは言えない声だった。
どうやら、暴風壁に絶対の自信があったようで、それを突破された事に、プライドを傷つけられたみたい。
それにしても、クソクソって、随分と口汚いなぁ…。
「地を這う虫ケラどもがッ! ここが、わたくしの城と知って訪うたかッ!?」
「そうだッ! 私たちは貴様を倒すためにきた!」
ガルーダの嘲笑に、アルフィノくんが負けじと言い返した。
もっとも、絶対的に自分の方が勝っていると思っているガルーダには、その声も鳥の囀りの様にしか聞こえないらしい。
「聞こえたかッ、皆の者ッ! 虫ケラめが、なにやらチィチィ言うておるぞッ! 虫ケラは虫ケラらしくッ! 地に這いつくばり、土でも食んでおれば良いのじゃッ! この大空で輝く、わたくしを崇めてなッ!」
うーん……多分、虫も崇める相手は選びたいと思うんじゃないかなぁ……。
なんだか、ガルーダの口が汚すぎて、逆に恐怖よりも呆れの方が勝ってしまった私は、そんなことを考えてしまっていた。
いけないいけない。緊張感は持っていないと……。
「ヘッ、その虫ケラでもなぁ! こうやって空を飛び、お前の懐に入ることができたんだ! そして、このままお前を討つことだってできる!」
シドさんも、なんだか余裕な感じで、ガルーダに言い返している。
その余裕の態度が気に入らなかったのか、ガルーダは吊り上がっている目を、更に吊り上げて甲高い声を上げる。
「この空は、わたくしのものよッ! 虫ケラごときが空を舞うなどとくだらぬ夢を二度とみれぬよう……その臓腑をむしりッ、血祭りにあげてくれようぞッ!」
その声と共に、イクサル族達が私達に襲い掛かって来ようとする素振りを見せた。
「イクサル族どもは、俺たちが圧える! お前達は、蛮神ガルーダを倒せ!」
「蛮神との戦いも、これで最後だ! 行け、イーディス! 暁のため……エオルゼアのために!」
イクサル族を迎え撃とうと構えた私達だったけれど、シドさん、アルフィノくんに、それを留められてしまった。
確かに、ガルーダを討伐しない限り、イクサル族をいくら倒しても、場の収集は付かないだろう。
私は、二人に頷くと、ガルーダの方へと向き直り、戦闘態勢を整えたのだった。
「なれば……虚妄にまみれしそのそっ首ッ! 薄紙のごときその羽もッ! 腕もッ! 足もッ! すべてッ! むしり取ってくれようぞッ!!」
何処までも太々しく、自分に歯向かってくる私達に、キレた様に叫び声を上げるガルーダの声で、戦闘の火蓋は切って落とされたのだった。