「うむ、見回りご苦労……なに、この辺りに怪しいヤツが? やはり不穏分子が居るという密告は本当だったのか……もし何かあれば、この帝国式発煙筒を使うんだぞ。我々がすぐに駆けつけるからな。では、引き続き見回り任務を頼む!」
手に入れた帝国軍制服に身を包んだ私は、帝国の魔導アーマーを奪取するための作戦を実行に移した。
バイザーで顔を隠しているせいか、哨戒部隊の隊長は、帝国式敬礼をしてきた私を疑うことも無く、報告を信用した様だった。
後は、カストルム・セントリから離れた場所に、この部隊を誘き出し、魔導アーマーを奪取すれば、潜入作戦の準備は整う。
私は、手に入れた発煙筒を握りしめながら、元レヴナンツトールのキャンプ跡地へと向かったのだった。
「よう、作戦は上手く進んでるようだな。魔導アーマーを奪取するなら、技術屋がいたほうがいいだろうと思ってな……見ろよ。丁度おいでなさったようだ」
キャンプ跡地にある、偏属性クリスタルの山の頂で発煙筒を焚いた私の元へ、シドさんがやって来た。
それと同時に、発煙筒の煙を発見した哨戒部隊が、こちらに向かってくるのが見える。
「これは……何事だ? てっきり、先ほど報告があった不穏分子の件だと思ったのだが……」
さっきの哨戒部隊の隊長が、なんの異常も見られない現場の様子に、訝し気に首を傾げている。
そこに、わざと彼らに見つかる様に姿を見せる事で、彼らは、すっかり私達が不穏分子だと信じ込んだ様だった。
「貴様、不穏分子だな! 魔導アーマーを出せ、叩くぞ!」
そうして、魔導アーマーの強奪戦が始まった。
数の上では、私達の方が不利だったけれど、どうやら彼らは徴用されたばかりの様で、兵士としての練度は大したことは無かった。
途中で、別動隊の増援があったけれど、それも撃破した私達は、何とか魔導アーマーを奪取することに成功したのだった。
「よくやった! ……しかし。こいつはちょっと、やりすぎちまったようだ」
帝国兵を倒し、乗り手のいなくなった魔導アーマーは、動いてはいるものの、かなり派手な黒煙を上げていた。
急いで、ピックスさんとウェッジさんが、魔導アーマーの状態をチェックする。
「派手に煙は出てますけど、そこまで深刻なダメージじゃないですね。すぐにでも直せるでしょう」
ピックスさんのその言葉に、私はほっと胸を撫で下ろした。
とりあえず動かせるように応急処置を施したあと、シドさん達は、魔導アーマーをレヴナンツトールへと持ち帰って行ったのだった。