崖下へと飛び降りた私達を待っていたのは、エンタープライスだった。
デッキにはシドさんと、アルフィノくんの姿も見える。
無事、全員乗り移ったことを確認したシドさんは、一気にエンタープライズの出力を上げ、カストルム・セントリ上空へと高度を取ったのだった。
「なにッ!?」
その時、突如、ひと筋の閃光が、エンタープライズを掠めた。
回避行動をとるエンタープライズにしがみ付きながら見下ろしてみれば、そこには、アルテマウェポンの姿があった。
その傍らには、当然のようにガイウスの姿も見える。
「アルテマウェポン……完成していたのね……」
初見のはずだけど、ミンフィリアさんは、アルテマウェポンの事を知っている様だった。
そして、その絶対的な力をもって、ガレマール帝国が何をしようとしているかも看破していた。
「あれは!? 見ろ、ガイウスの横!」
その時、なにかに気が付いたのか、アルフィノくんが指さした。
いつの間にか、そこには、黒衣のロープに身を包んだ男……アシエン・ラハブレアの姿があった。
私達が注目する中、突如、ラハブレアがローブのフードを脱ぎ払った。
そして、そこに現れた姿に、全員が衝撃に息を詰まらせたのだった。
「サンクレッド!?」
ミンフィリアさんの悲痛な叫びが。妙にハッキリと聞こえた。
アシエン・ラハブレアの正体、それは、行方不明になっていたサンクレッドさんだったのだ。
……一体全体、なにがどうなっているの……?
混乱する頭を必死に抑えつけながら、私は、目の前の光景を理解しようと頭をフル回転させたけれど、なんだか空回りしているかのように、まるで思考が纏まらない。
そうこうしているうちに、再び、アルテマウェポンの攻撃がエンタープライズを掠め、船体が大きく揺れた。
「限界だ! 脱出するぞ!」
そう言って、この空域から離脱を図るシドさんによって、一気に加速していくエンタープライズ。
ミンフィリアさんの、サンクレッドさんを呼ぶ叫びが木霊する中、私達はカストルム・セントリを後にしたのだった。
「サンクレッドが、アシエン・ラハブレアだったとはな……」
憔悴しきった雰囲気の中、長い沈黙を破ったのは、アルフィノくんだった。
本来であれば、奪還作戦も成功し、無事に帰れることを喜ぶべきなのだけれど、誰一人として、笑顔を浮かべる人は居なかった。
「よりにもよって、彼にアシエン関連の調査を進めさせていたのは私なのだぞ! 気付けなかった自分が情けない! そして、我々の情報は、奴らに筒抜けだったというわけだ……クソッ!」
ひとり、怒りを露わにするアルフィノくんの言葉を、私は、どこか遠くで聞いていた。
トトラクの千獄でラハブレアに最初に出会った時から、あれはサンクレッドさんだったのだろうか。
ハッキリとは言えないのだけど、私は、なにか違和感の様な、モヤモヤした気持ちが溜まっていくのを感じていたのだった。
「……ともあれ、皆は無事だったのだ。敵がどんなに強大であろうとも、力を合わせて戦えばよい。暁の血盟には、それができるのだから。今こそ、エオルゼア諸国へ知らしめるのだ! 蛮神ガルーダ討伐の報とともに、暁が蘇ったことを!」
そう言って、力強く言葉を放つアルフィノくん。
「バルデシオン委員会に連絡をとったわ。すでにガレマール帝国から、エオルゼアの各首領のもとへ最終通告が行われたそうよ。ウルダハの香煙の間で、三国首領による会談が行われているようだけれど、委員会に居る知人の話によれば、状況は良くないわ……」
アルフィノくんが話している間、どこかと連絡を取り合っていたミンフィリアさんが、その言葉を引き継ぐように状況を説明してくれた。
「時間がないわ、急いで首領たちのところへ行きましょう……話し合いの結論が出る前に、エオルゼアの牙が折れていないと伝えなきゃ!」
その言葉に私達は頷くと、一路、各国の首脳が集まっているという、ウルダハに向かったのだった。