「いたぞ、侵入者だ!包囲しろ!」
物資保管塔から出た私達を見つけた警備兵が、鋭い声を浴びせて来た。
結構な数の兵がこちらに向かってきているのが見えた。
「これ以上、我慢ならないッス! タタルさんは、オイラが守ってみせるッス!! ……ビッグス、あとのことは任せたッス!」
その時、魔導アーマーを操縦していたウェッジさんが怒りの声を上げた。
そして止める間もなく、警備兵に突撃して行ってしまったのだった。
「待て、ウェッジ! やめろぉぉぉ!」
慌てて、ピックスさんが制止の声を上げたけれど、その声は、ウェッジさんに届く前に、分厚い鉄のゲートの閉じる重い音に掻き消されてしまった。
さらに、向こう側でウェッジさんが操作したのか、ゲートロックされてしまい、追いかける事も出来なかった。
「くっそ……!」
そう呟きながら、拳をゲートに叩きつけるピックスさん。
しかし、なんとかしようと考える間もなく、魔導兵器が姿を現し、襲い掛かって来たのだった。
「ミンフィリアさんたちはオレが守る! あいつらを食い止めてくれ!」
そういうピックスさんに、ミンフィリアさんとタタルさんを任せ、私達は、魔導兵器を排除するべく戦闘を開始したのだった。
「く……!」
それから、幾度となく押し寄せる帝国兵を退け、魔導兵器を破壊し続けた私達だったけれど、やはり数に圧され、徐々に追い詰められていってしまった。
崖を背にした私達に逃げ場はない。
「金髪の女以外は殺しても構わん!」
そう言って、取り囲む帝国兵の百人隊長が手を上げると、一斉に銃口が私達に向けられた。
せめて、ミンフィリアさんの盾になろうと、私は彼女を庇う様に、一歩前へと進み出て、帝国兵を睨み付ける。
「てぇ!」
百人隊長が手を振り下ろすと同時に、一斉に火を噴く銃口。
しかし、その刹那、滑り込むように走って来たヤ・シュトラさんによって、その銃弾は、全て弾かれたのだった。
「ヤ・シュトラ!」
ミンフィリアさんの嬉しそうな声を背中に受けて、ヤ・シュトラさんが笑みを浮かべる。
「パパリモ! ミンフィリア!」
そして、取り囲む帝国兵を薙ぎ倒しながら、イダさんも姿を現した。
「遅いぞ!」なんて、パパリモさんが憎まれ口を叩いているけど、その表情は、やっぱり嬉しそうだ。
形勢逆転とまではいかないけれど、こちらに増援が現れた事で、帝国兵たちは戸惑っているみたいだった。
もっとも、こちら側も、この数を相手に戦うのは流石にリスクが高いし、下手には動けないのだけど……。
「ひぃ、ひぃ、ひぃ、ひぃ…………ひぃぃ……ひぃぃ……」
その時、ウェッジさんが駆け込んできた。
どうやら、魔導アーマーを囮にして、包囲を抜け出て来たみたい。
私は、彼の無事に安堵したけれど、ピックスさんは魔導アーマーを置いてきた事を責めている様だった。
『俺だ……シドだ……。聞こえ……るか……!? 5つ数えたら……そこから……飛び降りろ! いいな!」
その時、リンクパールから、シドさんの声が聞こえて来た。
みんなも聞こえていた様で、お互いに顔を見合わせながら頷き合い、誰とも無くカウントダウンを開始する。
「5……」
「4っ!」
「3!」
「2ッ!」
「今ッ!!」
そして掛け声と共に、私達は、崖下へと身を躍らせたのだった。