異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

ネロ・トル・スカエウァ

「…これは…」

魔導アーマーのカノン砲を使って、隔壁を吹き飛ばすことに成功した私達は、その先に続いていた通路を、魔導アーマーを駆ったまま進んで行った。
途中で現れた、妙な機械の腕や、帝国兵を排除しながら進んで行くと、やがて、私達の目の前に巨大な隔壁が立ちはだかったのだった。

『どうやらそれは、超硬サーメット合金で固められているようだ。ちょっとやそっとの衝撃では破れないだろう……無茶をするしかないな』

その時、シドさんから連絡が入った。
どうやら、特殊な合金で固められているらしく、通常の砲撃では破壊することは難しいみたい。

シドさんから、魔導アーマーのリミッターを外した砲撃のやり方を教わった私達は、タイミングを合わせて、一斉に魔導カノンを隔壁に叩き込んだ。
激しい爆音と振動と共に吹き飛ぶ、超硬サーメット合金の塊。
それと同時に回路が焼き切れ、全ての機能を停止した魔導アーマーが、ガクンと音を立てて動きを止めた。

「……ありがとう」

私は、魔導アーマーの機体に手をかけ、小さく声をかけると、隔壁の先へと進んで行ったのだった。

 

 

「ほほう……ずいぶんと派手なことをするじゃないか」

隔壁を抜けた先の部屋に入った私達を、深紅の鎧に身を包んだ男が待ち構えていた。
帝国軍の将軍クラスと思われる男は、私達を値踏みするように見ながら、声を掛けてきた。

『なんだ、誰か居るのか!?』

異変に気が付いたのか、シドさんの声がリンクパールから聞こえて来た。
その時、赤い鎧の男が、腕に付いていた機械を操作したのが見えた。

「あーあー、聞こえるか? こうやって話すのは、何年振りになるかなぁ?」

そして、男は、私達のリンクパールの通信に割り込んで来た。

『……お前は……まさかネロなのか!?』

男の声を聞いたシドさんが、驚愕の声を上げる。

「なぁ、シド・ナン・ガーロンド……お前は、いつまでオレの前にいるつもりなンだ?」
『……いったい、何の話だ』

ネロと呼ばれた男は、シドさんに脈絡なく問いかけた。
シドさんもわけが判らない様で、戸惑った様な声がリンクパールから聞こえてくる。

「魔導院の頃からだなぁ。お前だけが天才ともてはやされ、認められる。才能も技術も、全部オレが勝っているというのによ。ミド・ナン・ガーロンド筆頭機工師のせがれってだけで、ちやほやされンのは、お前だった……」

私達の事など眼中にない様子のネロは、リンクパールの先にいるシドさんへと語り掛けた。

「そしてお前は、帝国からいなくなった……天才と言われていた男が消えたンだ。それがどういうことかわかるか? 人々の記憶だけに残って伝説になったンだよ! 今でも帝国では、お前は、天才機工師シドだ! どんなにオレが勝っていようが、足掻こうが! 伝説と比較され続けるンだよ!」

徐々に声色が荒くなっていくネロに、シドさんは返す言葉が見つからない様で、『ネロ…』とだけ呟いたのが聞こえた。

「そして、ガイウス閣下が選んだのもお前だ……オレがあれほど尽くしてきたというのに、閣下は筆頭機工師にお前を欲しがっている……悲しいよなぁ……恨めしいよなぁ……」

そう言うと唐突に、ネロは、私達に視線を戻した。

「閣下はアルテマウェポンを最終起動中だ。あれは、オレの最高傑作なンでね。そう安々と向かわれても困るのさ。だから、ここで、しばらく時間稼ぎをさせてもらうぜ?」

『……おい、何をする気だ!?』

シドさんのネロを問い詰める声が、ブツリと音を立てて遮断された。
どうやら、ネロがリンクパールの通信機能を妨害したらしい。

 

「冒険者……オレは、エオルゼアに入ってから、ずっとお前を見てたンだぜ? 人にして蛮神を倒す、その能力。そして、ヤツらのテンパード化を妨げる不可思議な超える力。閣下が熱を上げるのも無理はない……」
「オレも超える力には興味があるンだ。その力を解析して、魔導技術に転用できれば、オレはさらなる高みにいける!」

そう言って、ネロは頭上へと手を掲げた。
それと同時に、巨大な槌が彼の目の前へと落下してきた。

「オレには天才シドにも勝る魔導技術がある! それを証明してみせる! 必ず、閣下にオレの存在を認めさせる! オレの名は、ネロ・トル・スカエウァ! 貴様の力、利用させてもらうぜ!」

そして、その槌を担いだネロは、私達に戦いを挑んできたのだった。

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