異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

光の意志

「無様だな……」

アルテマウェポンを退け、ガイウスを倒した私達の前に、再び、アシエン・ラハブレアが姿を現した。
ラハブレアは、倒れるガイウスに醒めた視線を投げながら、蔑む様に呟いた。

「貴様が力を求めたからこそ、アルテマウェポンを、そして、究極魔法アルテマを授けたというのに。所詮は人の子か……この程度のものとは」

そう語るラハブレアの表情は固く、どこまでも冷たいものだった。

「この星のことわりは乱れている……このままではいずれ、この星のみならず、物質界……エーテル界……世界を成す、すべての法則が乱れるであろう」

そして、地上へと降り立ったラハブレアは、私達に語り始めた。
曰く、全ての元凶はハイデリンにあり、それを取り除かない限り、母なる星を守る事は出来ないと。
その為には、彼らアシエンが信奉する、”絶対の神”を再臨させる必要があるのだと。

「我らアシエンの主……絶対の神の再臨には、この地に、より大きな混沌が必要となる……そのためには、神を狩る、お前たちの力が邪魔となるのだ」

私達に背を向けて語り続けていたラハブレアは、そこで初めて私達に向き直った。

「ハイデリンの、光の使徒よ! 闇に抱かれて消し飛べッ!!」

そして、ラハブレアとの、そして恐らく、最後の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

 

ラハブレアは、闇の魔法を駆使して攻撃してきた。
その黒い魔力は、強力でかなりの威力があったけれど、ここまで戦ってきたみんなとの連携の前では、そこまでの脅威となるものでは無かった。

「フハハハハハハ! やるではないか、光の使徒よ! しかし、よいのか……このまま私を倒すということは、私が取り憑いた、この者を殺すということだぞ?」

明らかに旗色が悪くなってきたラハブレアは、嘲笑を上げると共に、そんな卑劣な言葉を口にしてきた。
思わず、一瞬、攻撃の手が止まった私達の様子を見て、ラハブレアは更に、嘲笑を重ねてくる。

『光の意志を持つ者よ……闇の言葉に惑わされてはなりません……』

その時、戸惑う私達に警告するように、ハイデリンの声が聞こえて来た。

『闇の力を打ち砕くのは、光の力のみ。今一度……あなたに……光の力を……さぁ、光のクリスタルを掲げるのです!』

ハイデリンのその言葉と共に、再び熱を帯び始める、光のクリスタル。
そして、クリスタルから溢れ出た光が、ラハブレアを、全てを包み込んだのだった。

 

そして、私とラハブレアは、別の空間に居た。
そこは、光のクリスタルを手にした時に見る幻視の世界によく似ていたけれど、今は、私だけが見ている世界ではないと認識する事ができた。

そして、私の足元に、光のクリスタルの魔法陣が描かれた。
全ての頂点に置かれた、火、水、氷、風、土、雷の6つのクリスタルは光り輝き、強く太い光の柱へと変化していく。

『その光を武器に変え 闇を切り裂くのです!』

その時、ハイデリンの声が聞こえた。
その言葉に頷いた私は、光の柱に包まれながら、光の武器をイメージする。

やがて、私の手には、一張の弓が現れていた。
それは、極普通の弓矢の形だったけれど、普段使い慣れている、安心感のある形でもあった。

「させん!!」

その時、ラハブレアが私の行動を阻止せんと襲い掛かって来た。
私は弓幹をラハブレアへと向けると、ゆっくりと弦を引き絞っていった。

「……光よ、闇を射抜いて!!」

そして、私は願いと共に、ひと筋の光の矢を、ラハブレアへと解き放ったのだった。

解き放たれた光の矢は、ラハブレアを撃ち抜き、その闇のローブに幾筋もの光の穴を穿った。
そして、サンクレッドさんの体から、その光によって引き剥がされるように、もう一つの黒いローブの体が現れたのだった。

「なにィ!?」

それは、ラハブレアの本体だった。
まさか、こんな形で、サンクレッドさんの体から、強制的に引き剥がされるとは思っていなかったのだろう。
その表情には焦りの色が浮かび、驚愕が口を付いて出ていた。

 

既に、私の手から光の武器は消えていたけれど、不思議と、次に為すべきことは解っていた。
私は、いつの間にか姿を現していたハイデリンの前に立つと、ラハブレアを睨みながら、暁のみんなの、エオルゼアを愛する人たちの想いを、強く念じていた。
やがて、それは、ここには居ないはずの人達の姿を形作っていった。

アシエンは、闇の存在そのもの。
その体に実体はなく、闇のクリスタルを介在して、人に憑依する不死の存在。

以前、ミンフィリアさんが言っていた言葉を思い出しながら、私は、一つの可能性を考えていた。
実体を持たない、魂だけの存在なのならば、より強い魂…強い意志をぶつけることで、大きなダメージを与えることが出来るのではないかと。
そして、私一人の意志では無く、沢山の人の強い意志をぶつければ、更に大きなダメージを与えられるのではないかと。

それは仮説ではあったけれど、私は、不思議と、自信をもって確信していた。
そして、私は、みんなの意志と共に、そして、自分自身の願いを光の矢として、ラハブレアにぶつけたのだった。

「これが……光の力……!? 光の意思は……人と人とを繋ぐというのか……!?」

その光の意志の奔流に飲み込まれながら、ラハブレアは、再び驚愕の声を上げていた。
その姿は光に飲み込まれていき、千切れるように消えてゆく。

「……おのれ……!」

そして、断末魔の声を残して、ラハブレアは完全に消滅した。
後に残ったのは、ラハブレアの支配から解放されたサンクレッドさんの姿と、ハイデリンの大きな姿だけだった。

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