異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

カッパーベルで消える夢

「……ドールラス・ベアーさん……」

ウルダハのクイックサンドで依頼を受けて、私は、西ザナラーンにあるカッパーベル銅山へとやって来ていた。
そこで、とある冒険者の訃報を聞いた。

サスタシャ浸食洞を攻略した後、溺れた海豚亭で出会った、ルガディンさん。
お互いに頑張ろうと言葉を交わし、タムタラの墓所の前で再会した時も、希望と野望に燃えていた人。

彼は、私と同じように、ここ、カッパーベル銅山での仕事の依頼を受けて、一足先に調査を進めていた中、命を落としてしまったらしい。
顔を見知っている程度で、特に交流があったわけではないけれど、それでも知人の訃報はショックだった。

 

 

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ドールラス・ベアーさんが遺してくれた教訓を胸に、今回も、実力のある冒険者さんに同行頂いて、銅山に突入した。

今回、同行してくれたのは、リリウムさん、アリスディールさん、ルルイさん。
リリウムさんと、アリスディールさんは、メンターとして、ビギナーの支援もされている実力の持ち主だ。

だからといって、おんぶに抱っこじゃ、私自身の為にもならないし、しっかり、自分の出来ることをやらなくちゃ。

 

カッパーベル銅山の中は、コブランとスプリガンの姿が多く見られる以外は、特に変哲はなかった。
ただ、普通は大人しい気性のコブランやスプリガンが、とても神経質になっていて、攻撃的になっている。

なにかに怯えている…?

そうだとすると、やっぱり、ヘントンケイレス族が暴れている事に関係しているのかもしれない。
話では、最下層で、封印岩盤を打ち貫いちゃったって言ってたから、ヘカトンケイレス族が居るのは、もっと下の方かしら。

 

ドガァッ!!

そんな事を考えながら先を進んでいた時、突如、通路横の壁が爆発するように崩れて、そこから巨人が姿を現した!

「ヘカトンケイレス族…!?」

その巨大な体躯は、ルガディン族よりも大きく、非常に発達した上腕筋で振り下ろされる槌は、どんな強固な岩盤も打ち砕けそうだった。
目深に被った兜から覗く瞳は、胡乱気で、焦点が合っていないように見える。

しかし、私達の姿を見つけた瞬間、その瞳が、一気に、怒りと狂気に満ちた色に染まるのが判った。

雄叫びを上げながら、否応なく襲い掛かってくるヘカトンケイレスに、私達は迎撃態勢を整えた。

 

「ふぅ…」

不意打ちをされてしまったけれど、動きは単調であったこともあり、そんなに苦労せず、そのヘカトンケイレスは、倒すことが出来た。
それにしても、こんな上層にまで上がってきているなんて…早く何とかしないと、地上に出ちゃいそう…。

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その先でも、ヘカトンケイレス族は、姿を現しては、暴れまわっていた。
幸い、数は少なく、単独行動をしている個体ばかりだったので、さほどの脅威にはならなかったけど、やっぱり、その力は油断できない。
徒党を組まれる前に、最深部にあるであろう、封印岩盤の状態を確認しなくちゃ。

 

 

昇降機を使い、崩れた岩盤を、採掘用の火薬で取り除いたりしながら、私達は、坑道を進んでいった。
途中、巨大なスライムに出くわしたりしたけれど、それ以外は特に問題もなく、坑道の最深部へと辿り着いた。

そこは、巨大な空間の広がる地下空洞で、剥き出しの岩盤に囲まれた場所だった。
その岩盤は、独特の光を放っていて、それが封印を施された岩盤なのだとすぐに分かった。

 

それにしても、この封印岩盤は、どこまで広がっているのだろう。
見える範囲だけでもかなり巨大なのに、見えてないところも考えると、この岩盤の広さは想像もつかない。
古代ウルダハ王朝の魔法技術の高さは、一体どれほどだったんだろう…。

周囲の岩壁を見上げながら、空洞の中央へと進み出ようとした時、右手の岩盤を突き破って、今までのヘカトンケイレスとは比べ物にならないほど、巨大なヘカトンケイレスが現れた。
たぶん、あれが、暴れているヘカトンケイレスの族長的な存在に違いない。

族長ヘカトンケイレスは、その巨体よりも、さらに巨大な戦棍を持っていた。
それを軽々と振り回す剛腕によって、戦棍が振り下ろさせる度、パラパラと壁や天井が崩れるほどの衝撃が地面を揺らした。
あの戦棍の間合いには、絶対に入っちゃいけない。
私は、間合いを詰め過ぎないように警戒しながら、攻撃を開始した。

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族長は、やはり、見た目通り、非常にタフだった。
何本矢を打ち込もうと、みんなの剣や槍が突き刺さろうと、攻撃魔法がさく裂しようと、まるでビクともしていないように見えて、終わりが全然見えてこない。
本当に倒せるんだろうか…そんな不安に襲われ始めた時、さらに絶望しそうな事態が起きた。

新たなヘカトンケイレス族が、族長が出てきた穴から、姿を現したのだ。

「……あれ?」

しかし、新しく姿を現したヘカトンケイレスは、なぜか私達には目もくれず、反対側の岩盤へと向かっていった。
そして、岩盤に槌を振り下ろし始める。

……壁を崩そうとしている……?

その時、族長が壁を崩して現れた事を思い出した。

「もしかして、壁の向こうに、ヘカトンケイレス族がいるの…!?」

その事に気が付いた私は、慌てて、壁を壊そうとするヘカトンケイレスにターゲットを変える。
リリウムさんもそれに気が付いて、一緒に攻撃してくれたおかげで、壁を崩される前に、ヘカトンケイレスを倒すことが出来た。

しかし、壁を壊そうとするヘカトンケイレスは、それだけで終わらず、幾度となく姿を現してきた。

やっぱり、壁の向こうには、相当数のヘカトンケイレス族がいるみたい。
壁を壊して、なだれ込んでくる大勢のヘカトンケイレス族を想像して、私は背筋が凍りつきそうになる。

そこからは、長い闘いだった。

何時までも動きを鈍らせない、族長のそこなしの体力。
倒しても倒しても現れる、ヘカトンケイレス。

何度も、挫けそうになる心を奮い立たせ、矢を番えては解き放ち続けたけど、段々と弓を引き絞る力が弱くなっていく絶望感。
いよいよ、矢の数も尽きかけ、さらなる絶望に折れそうになった時、とうとう、族長が膝を折った。

「イーディスさん、リミットブレイクを!!」

その時、誰かから、声が上がる。

リミットブレイク。
れは、戦闘で高まり続けた、全員の魔力や気力を一気に開放する、起死回生の必殺技。

私は、意を決して、リミットブレイクスキルを構え、体の正面に意識を集中させ、族長に狙いを定めた。

 

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「デスペラード!!」

スキルの発動と同時に、迸る魔力の奔流が、族長の巨躯を飲み込み、光の渦の向こうへと姿を隠す。
そして、すべてが消え去ったあと、ヘカトンケイレスの族長の体か、ゆっくりと、地響きを立てて倒れこんだ。

 

 

「倒せた…」

はぁはぁと、息を切らしながら、私は呟いた。
ドールラス・ベアーさんの夢を飲み込み、そしてヘカトンケイレス族の自由の夢も飲み込んだ、カッパーベル銅山の攻略は完了した。

……だけど…なんだろう……凄く、切ない感じがする。

倒れて動かない、ヘカトンケイレスの族長の体を見上げながら、私は弓を下したのだった。

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