「く、くそっ! 何なんだよコイツは!?」
カッパーベル銅山からウルダハへと戻った私を待っていたのは、難民の人に対する非道な行いの現場だった。
銅山でのモヤモヤを引きずっていた私は、女性に乱暴しようとしていた人達と対峙し、懲らしめてやったのだった。
……少しは、スッとするかなーと思ったんだけど……そうでもない……。
「あ、ありがとうございます……。助かりました……」
助けを求めていた、その女性がお礼を告げてきたとき、また、あの感覚がやってきた。
過去の出来事が見える、あの幻視。
そこに見えたのは、難民の問題に不安を募らせる、ウルダハの市民の様子。
そして、難民の女性が、ちゃんと商店でお肉を買っていた様子だった。
「なんだ! や、やろうってのか!? ……なんだと? この女が、ちゃんと買ってるところを見ただと!?」
彼女に言い掛かりをつけていた商人に、彼女が無実であることを伝えた。
追い打ちをかける様に、周辺のやじ馬から、同意の声が聞こえてくる。
ガラの悪い人は、旗色が悪くなって居たたまれなくなったのか、捨て台詞をはいて、立ち去って行った。
「一件落着……だね!」
どっと来た疲れに、肩を落としていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには、イダさんとパパリモさんが立っていた。
「君がグリダニアを発ってからの行動をしばらく見させてもらってたよ」
そう言いながら、二人は、しばらく、私の動向を見守っていたことを告げてきた。
なんでわざわざそんなことを? と思ったんだけど、どうやら、私の過去を見る幻視に関して、何かを知っているみたい。
そして、なにかしらの計画のために、私の力を借りたいらしい。
うーん…幻視に関しては、知りたいとは思うんだけど…なんだか、今日は気が進まないのよね……。
クイックサンドのモモディさんに話を通しておくと、伝えて去っていく二人の背中を、私は黙って見送ったのだった。
そして、私は、モモディさんに、カッパーベル銅山での仕事が完了したことを伝えに、クイックサンドへと向かった。
モモディさんは、外での一件も知っていたようで、労いの言葉をかけてくれた。
「そうそう。あなたに紹介したい人がいるの。こっちへいらっしゃい」
そういって、モモディさんは、傍らにいた幻術士の女の子を呼び寄せた。
「は、はじめまして。わたしはエッダと言います。あなたと一度、お話がしたかったのです」
そう言いながら、彼女は自己紹介を始めた。
…あれ? どこかで会ったことあったような……どこだったっけ……?
私が、彼女の事を思い出そうとしている間にも、彼女の話は進んでいく。
新人冒険者同士でパーティを組んでいたこと。
グリダニアで、パーティーのリーダーが命を落としたこと。
それがきっかけで、パーティーは解散し、彼女自身も、冒険者を止めようと思ったこと。
「……でも、彼が言っていたように、あなたの姿や戦うところを見て、いつか、こういう冒険者になりたいと思ったのです」
そう言って、彼女は、田舎に帰って、一から出直すつもりだと告げてきた。
ドールラス・ベアーさんも、私に影響されたって言っていたのを思い出す。
……なんで……私みたいな、駆け出しに……?
……それに…私がいたから、焦って命を落としたみたいに……そんなの……。
そのあとの事は、あまり覚えていない。
エッダさんは、最後に、私の名前を聞いて、お礼を言って去っていった。
モモディさんは、出会いと別れがどうとか言っていたような気がする。
私は……。