異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

吟遊詩人の詩

「おやおや、またお客さんか。……いかにも、わしがジェアンテルだ」

南部森林の片隅に、伝説の吟遊詩人が帰還してきているという噂を聞きつけて、私はその人を探しにやって来たのだった。

 

「おや、ずいぶん素晴らしい弓を持っているようだが……お主もまた、「強弓」ジェアンテルに用があるのかね? ならばすまぬが……」
「いえ。私は、吟遊詩人としてのあなたに会いに来ました」

ジェアンテルさんの事を教えてくれたルシアヌさんは、「強弓」ジェアンテルさんに、究極と言われる弓術をグリダニアに伝えてほしいと言っていたけれど、私は、実は、弓よりも詩の方に興味があったりする。
…ルシアヌさん、ガッカリするかしら…?

「……ほぅ、お主は、わしに詩歌を学びにきたのか? この乱世に詩歌を学ぶ余裕があるとは、見上げた心がけ」

私の返事が予想外だったのか、ジェアンデルさんが意外そうな顔をする。

「詩歌と弓術には、実は密接なつながりがあるのだよ。さて…… お主が吟ずる詩歌は、いかなる響きになるのやら」

そういうと、ジェアンデルさんは、プクノ・ポキというモーグリ族を訪ねる様に、言ってきた。
どうやら、そのモーグリ族に認められれば、吟遊詩人としての手ほどきをしてくれるらしい。

私は、早速、クォーリーミルの東に居るという、そのモーグリ族を訪ねに向かったのだった。

 

 

「クポー! クポ、クポ、クポ、クポ、クポー!! たいへんクポ! プクノ・ポキ、一生の不覚クポ!」

クォーリーミルの東の森の奥で、プクノ・ポキと思われるモーグリを見つけた。
なにやら慌てている様子で、私が近づくまで、まるで気が付いていない様だった。

「なんか用なのクポ!? プクノ・ポキ、今、いそがしいクポ!」

ジェアンデルさんの紹介でここに来たことを告げると、プクノ・ポキはとても喜ぶと同時に、ジェアンデルさんが歌を歌ってくれないと嘆いていた。

「あ、そんなこと言ってる場合じゃないクポ! 大事なお守りが、盗賊に奪われちゃったクポ!」

話の途中で、何かを思い出したプクノ・ポキが、慌てて私に訴えて来た。

どうやら大事なものを、ここらを根城にしている盗賊に奪われてしまったらしい。
そして、その奪還をもって、ジェアンテルさんから詩を習うための試練とするという。

なんだか、うまい事利用されている感じがしなくもないけれど、大事なお守りなら、取り戻さないとだよね。

私は、プクノ・ポキに、そのお守りの奪還を約束すると、盗賊のアジトへと向かったのだった。

 

「…数多いなー…」

流石に、このあたりを根城にしている盗賊のアジトだけあり、かなりの数の盗賊たちの姿が見える。
見つかれば、一斉に取り囲まれて、取り押さえられてしまうのは間違いない。

私は、ひとりひとり、隙をついては、矢で仕留めながら、奥地へと進んで行ったのだった。

「これかな」

プクノ・ポキが言っていたお守りと思われるものは、結構すぐに見つかった。
たぶん、金目のものに見えなかったのだろう。
それは、無造作に物置に放置されていたのだった。

私は、それを手にすると、再び、盗賊に見つからない様にしながら、アジトを後にしたのだった。

 

「もう、お守りを見つけたクポ!? すごいのクポ!? このお守りをジェアンテルに見せるのクポ!!」

お守りを持って戻ると、プクノ・ポキはすごく喜んでくれた。
そのお守りを持って、ジェアンデルさんのところに戻ると、彼も感心した様だった。

「おお、おかえり。見事、「プクノ・ポキのお守り」を受け取れたようだな?」

そういうジェアンテルさんに、お守りを見せると同時に、プクノ・ポキからの伝言を伝えた。

「わははは! なるほど「ずるいけど、楽しみクポ」とな! これは一本取られたのう」

それから、ジェアンテルさんは、吟遊詩人になってからの話をしてくれた。
プクノ・ポキに世話になりつつも、詩歌を吟する約束を果たせぬままでいたこと、やがて戦場に赴き、そして黒衣森へ戻れぬ事情が出来たこと。

「ずるいけど、楽しみクポ」とは、つまり、私を吟遊詩人にする事で、詩歌を吟する約束を、代わりに果たしてくれる人間を増やそうとする、ジェアンデルさんの思惑を、プクノ・ポキが、見抜いていたという事らしい。
そして、プクノ・ポキも、私が吟遊詩人になることを楽しみにしているのだという。

「これは、「吟遊詩人の証」というクリスタルでな。「吟遊詩人の証」には、古の「吟遊詩人」の記憶や旋律が、その想いと共に刻み込まれている」

ジェアンデルさんが言うには、プクノ・ポキのお守りは、古の吟遊詩人の記憶や旋律が封じ込められているのだという。
そして、これを携えて、様々な経験を積むことで、それが解放され、古の旋律が心に響くのだという。

その時、吟遊詩人の証から、何かの旋律が聞こえて来た。
それは、賢者と呼ばれた者の物語を語った詩と旋律だった。

「おお。クリスタルが光り輝いて……早速、古の旋律が響いた様だのう」

その様子をみて、ジェアンテルさんが笑顔を見せる。

「しかし、歌いこなすには弓術の経験が必要だ。吟遊詩人と弓術士の力は、表裏一体なのだから……。さあ、多くの経験を積み、古の旋律を再現すべく、お主の冒険を続けるのだ」

そういって、ジェアンデルさんは、弓術の修練を積み、力を付けた頃、また戻ってくるようにと、私に告げたのだった。

 

こうして、私は、吟遊詩人の見習いとしての一歩を踏み出すことが出来るようになった。
その道のりは、まだ、まるで見えていないけれど、きっと、世界を詩って見せると、証を握りしめながら、心に誓うのだった。

 

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