「……部下が通したという事は、それなりの用事か。手短に頼むぞ、冒険者」
そう言って、ホワイトブリム前哨地を預かるデュランデル家の騎士、ドリユモン卿は、訝し気に私を見下ろしたのだった。
フランセルさんの異端嫌疑が晴れた後、私達は、エンタープライズがストールヴィジル砦に墜ちたらしいという情報を得ることが出来た。
ただ、ストールヴィジル砦は、第七霊災の混乱の折、ドラゴンに襲撃され、その手に落ちてしまっていらしい。
現在も、ストールヴィジル砦の奪還作戦は進行中であるみたいだけど、その状況は、決して良いものでは無いみたい。
とりあえず、ストーンヴィジル砦奪還作戦の前線基地である、ホワイトブリム前哨地に行くのが良いだろうとアドバイスを貰った私達は、オルシュファンさんとフランセルさんの紹介状を手に、ホワイトブリム前哨地を預かるデュランデル家の騎士を訪ねる事にしたのだった。
「ストーンヴィジルの飛空艇か……ふむ……」
私達が、ここを訪ねた理由が書かれた紹介状に、目を通したドリユモン卿は、言葉を濁した。
多分、紹介状を持ってきたとはいえ、異邦人である私達に、その事を話すべきかどうかを推し量っているのだろうと思う。
「失礼する……誇り高きイシュガルドの騎士よ。我々は、暁の血盟の代表として、飛空艇を探しにきた、蛮神ガルーダ討伐のためにも、協力を願いたい」
その時、後ろで控えていたアルフィノくんが、そう言いながら進み出て来た。
成人しているとはいえ、まだ、若いアルフィノくんの姿に、怪訝な表情を見せるドリユモン卿。
そこに、追い討ちをかける様に、アルフィノくんが言葉を続けた。
「……そもそも飛空艇は、このシド・ガーロンドのもの。貴国にも事情はあるだろうが、持ち主に返すのが道理ではないか?」
また、そんな言い方をして……。
相変わらず、尊大な態度を崩さないアルフィノくんの言動に、私は緊張せざるを得なかったのだった。
「シド……!? ではあなたが、伝説の機工師の……!」
しかし、ドリユモン卿の興味は、アルフィノくんの言葉含まれていた、シドさんの名前に向いた様だった。
話が抉れたらどうしようかと思っていた私は、シドさんのネームバリューの高さに感謝すると共に、やはりすごい人なのだなと感心するのだった。
「信じてはなりませんよ、ドリユモン卿」
その時、何処からともなく、審問官のギイェームが姿を現した。
彼は、私を一瞥すると、ドリユモン卿に諭す様に言葉を続ける。
「伝説の機工師シドは、⻑らく行方不明になっている……そう都合よく現れるとは思えません。それに暁ですって? 壊滅したとの報せが届いてから、その名を語る偽者も多い……とても本物だとは信じられませんね」
そう言われて、私達には、それを否定する事も、私達の言い分を証明する事も出来ない事に気が付く。
私達が言い返さない事に、ギイェームはほくそ笑み、さらにドリユモン卿へと話を続ける。
「ストーンヴィジル奪還は、デュランデル家に任された大任。他家からの紹介があるとはいえ、素性の知れない冒険者を聖戦に介入させてはなりません」
そう言われて、ドリユモン卿はハッとしたような表情を浮かべたのだった。
「……たしかに。もっともな意見だ、ギイェーム。聞いてのとおりだ、ストーンヴィジルに立ち入ることはまかりならん。どうしてもというなら、我々の奪還を待つんだな」
そう言って、ドリユモン卿は、口を閉ざしてしまったのだった。
アドネール占星台に続いて、またしてもイシュガルドの鎖国的な対応に行き詰らされた私達は、何か別の方策を考えることにして、一旦、ドリユモン卿の執務室を後にしたのだった。
それにしても……ギイェームは、なんだか執拗に、私達の邪魔をしている様な気がするのだけど……気のせいなのかしら……?