「…………」
カッパーベル銅山攻略の後、私は、リムサ・ロミンサに来ていた。
本当は、暁の血盟? っていう組織に行かなくちゃいけないんだけど…なんか、気が進まないのよね……。
「ねぇ。カーくん。私は、このまま進んで良いのかなー」
リムサ・ロミンサの海を眺めながら、傍らにいるカーくんに話しかける。
もちろん、カーくんは、そのつぶらな瞳で見返してくるだけで、なにも返事はしてくれない。
「………」
再び、沈黙が訪れる。
別に期待されることは、嫌いじゃない。
それは、私の行いが評価されたことの結果だし、次への原動力にもなり得る。
でも、それは、私が追いかける立場で、追いかける目標から見ての評価だと思っていた。
私よりもずっとすごい人が沢山いるし、私自身、まだまだ駆け出しの冒険者だと思っている。
だけど、その私を目標にするという人がいる。
そして、その結果、命を落としたという。
そんな責任……私には負えないよ……。
『そんなん、お互いさまやろ? イーディスが目標にしている人やって、そう思っとるちゃうん?』
「!!」
不意に、お姉ちゃんの声が聞こえた気がして、辺りを見回す。
でも、周囲に人影はなく、カーくんが、変わらず私を見上げているだけ。
そして、思い出した。
昔、似たようなことがあって、重圧に挫けそうになった時に、お姉ちゃんが言ったんだ。
私が目標にしている人からすれば、私のそれは同じことだろうって。
「戦術とは、望む現実を作るためにある」
以前、巴術士ギルドの仕事で出会った、ク・リヒャさんが言っていた言葉を思い出す。
どんなに高い潜在能力を有していても鍛錬の戦術を誤れば、望む現実を得ることは出来ないとも。
……私の望む現実……。
それが何なのかは、よくわからない。
『わからへんのやったら、わかるまでやったらええやん』
お姉ちゃんがよく言ってた言葉を思い出した。
うん。
「わかるまで、やったらええやん」
私は、そう呟くと、カーくんを呼び寄せ、ギュッと抱きしめた。