「わたしはミンフィリア。この「暁の血盟」の盟主です」
ベスパーベイにある砂の家で、私は、暁の血盟の盟主さんと面会した。
そこには、イダさんやパパリモさんが居て、他にも多くの人が、私を出迎えてくれた。
ミンフィリアさんは、まず、暁の血盟の説明から始まって、私の過去の幻視に関しての話をしてくれた。
彼女が言うには、あの幻視は、「超える力」と呼ばれるもので、言葉の壁や、心の壁を超える力があるのだそう。
そして、私のそれは、時間の壁を超える力なのだそうだ。
ちなみに、ミンフィリアさんも、同じ力を持っているらしい。
そして、この力を使って、エオルゼア救済のための活動に、手を貸してほしいという。
また、話が大きくなってきたなぁ……。
思わず、また、身を引きかけちゃったけど、「やってみりゃええやん」と小さく呟いて、気持ちを持ち直させた。
「判りました。私で良ければ、お手伝いさせてください」
そう、ミンフィリアさんに答えると、彼女は、満面の笑顔で喜んでくれた。
そして、私は東ザナラーンにある、キャンプ・ドライボーンへとやってきた。
ここ最近、この付近で難民が行方不明になる事件が多発していて、それが蛮神問題に繋がっていると、暁の人達は考えているみたい。
ともかく、情報収集が必要という事で、サンクレッドさんと手分けして、いろいろと調べることにしたんだけど…。
「俺たちに構わないでくれ!」
「難民がどうなろうと、知ったことじゃない」
そこにあったのは、市民と難民の確執と亀裂だった。
市民からすれば、どこの誰とも知れない難民によって、自分達の生活を脅かされることへの警戒と嫌悪が。
難民からすれば、元の生活を壊され、追い出された先での、希望の見えない 生活へ不満と絶望が。
それぞれの立場の渇いた心が、町全体に蔓延っている状態だった。
それを見て、ウルダハや他の都市部での難民問題は、本当に上辺だけのものだったんだと、痛感する。
きっと、お互いに手を取り合い、助け合うことが出来れば、今の状況を乗り越えていくことが出来るはずだけど、一度、どん底まで落ちて這い上がってきた今だからこそ、その手を取り、一歩を踏み出すことが怖いんじゃないかなと思う。
だからと言って、行方不明者が出ている事件を、放置するわけにもいかないし、ここは、余計なお世話と言われるかもしれないけれど、解決しなくちゃいけない。
そんな状況であったので、なかなか、情報収集は困難だったけれど、やがて、私は一枚のビラを見つけた。
そこには、「貧しい貴方に、ナル神の富を分配します」と書かれていて、非常に怪しいものだった。
実際、ナル神の司祭である、オルセンさんに確認を取ってみたけれど、やはり、偽物の様だった。
そこで、私とサンクレッドさんは、難民に変装して、このビラを配っている誘拐犯を誘き出す事にしたのだった。
難民が多く集まっているという、池のほとりで待つこと半刻。
その男は、姿を現した。
「貧しき者よ、私はナル・ザル教団の司祭。もしや、あなたは職を探しているのではないですか?」
「貴方は、司祭様……ですか?」
「そうです、怯えることはありません。私は聖アダマ・ランダマ教会の司祭です……」
男はそういうと、サンクレッドさんに、例のビラを手渡してきた。
それを確認してから、正体を明かすサンクレッドさん。
その男は、ウルダハで、オルセンさんにゴロツキを嗾け、難民の行方なんか知ったことかと唾棄した商人、ウグストだった。
罠にかけられたことを察したウグストは、実はゴールドバザーという町を守るためにやったと言い訳を始めた。
なんでも、近くのアマルジャ族に狙われていたゴールドバザーを守るために、クリスタルの運搬予定を流し、難民を引き渡していたと。
ただ、サンクレッドさんが、なぜ不滅隊に相談しなかったのかを問われると、途端に顔色を変えて、言葉を濁し始めた。
更にサンクレッドさんが問い詰めると、衝撃の理由を話し始めた。
「報酬がよかったんだよ! かなりのギルだ! いくらモールの肉を売っても、こんなには儲からねぇ!」
その言葉を聞いた瞬間、私は視界が赤く染まるような感じがした。
余りにも利己的な、同情も酌量も感じない理由に、怒りで頭がくらくらした。
サンクレッドさんも同じ思いだったようで、その怒りの形相をまったく隠そうともしていなかった。
「恨むんなら、自分かザル神にしてくれよな。あばよ!」
そう言葉を吐き捨てながら、逃げようとするウグスト。
しかし、既に、私は、彼の退路を断つ様に回り込んでいた。
目の前に立ち塞がる私の顔を見て、ウグストは驚愕の声を上げ、逃げられないと観念したのか、その場に膝をついたのだった。
「くっそぉぉぉ……」
そう呻きながら、悔しがるウグスト。
でも、畜生にも劣る行為を行ったあなたには、そんな事をいう資格は無いと思います。