異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

猛る焔神イフリート 前編

 

「絶対に許さない!!」

私の怒りの声が、廃墟に木霊した。

 

 

マテリアの事を教えて貰った後、砂の家に戻った私に、再び、不滅隊から連絡があった。

なんでも、ウグストを囮にして、事件の主犯格である、アマルジャ族を一網打尽にするという。
その作戦に、是非、参加してほしいとの要請だった。

依頼を引き受けた私は、再び、ドライボーンへと赴いた。
そこでは、既に不滅隊が準備を整え、今にも出発しようとしているところだった。

「「暁の血盟」の協力者か? 待っていたぞ!」

不滅隊の軍曹さんを始め、不滅隊の人達は、もう準備は整っているらしい。
作戦を決行する、ゴールドバザーの近くにある廃墟、「見えざる都」で集合との事だった。

 

そして、作戦が開始された。
手筈通り、まず、ウグストがアマルジャ族との密会を開始する。
それから、私達は、アマルジャ族が出てくるのを見計らって、全員を包囲して捕らえるという流れだ。

密会に現れたアマルジャ族は3人。
それに対して、私を含めた、不滅隊の人数は倍以上いる。
仮に抵抗があったとしても、何とかなる人数差だ。
しかし、突如、状況は一変した。

アマルジャ族を取り囲んだ私達を、さらに多くのアマルジャ族が取り囲んだのだ。

待ち伏せされた…!?

そのとき、ウグストが、声を上げて笑い始めた。
さらに、不滅隊の一人からも、嘲笑の声が上がる。

「俺たちがこれまで、どうやって不滅隊の警備を抜けて取引してきたのか、これでわかったか?」

つまり、不滅隊の中にも内通者がいて、警備情報が全て、アマルジャ族に漏れていたという事らしい。

……お金のために、人を裏切り、国を裏切り……国を守ろうとする人の信念までも裏切って……なんて、醜い人達なんだろう……。

「……絶対許さない!!」

多勢に無勢ではあったけれど、まったく退く気の起きなかった私は、アマルジャ族を睨み付けながら、弓を構えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん……」
「気が付いたか」

気が付くと、私は暗い洞窟の中で寝かされていた。
身を起こすと、不滅隊の人達が縛られて座らされている。

戦いが始まって、多くのアマルジャ族を倒し続けたものの、次から次へと現れる彼らに、数で押され、最後には魔法で眠らされてしまったのを思い出した。

「どうやら俺達は「蛮神イフリート」に差し出されるらしい。どうせ死ぬなら、戦って死にたいもんだぜ……」

状況を察した軍曹さんが、無念の唸り声を上げる。
命を取られなかったのは、私達を生贄に捧げるためらしい。

さて……どうしよう……。
リンクシェルでミンフィリアさんたちに連絡を取ろうかと思ったけど、なにかで妨害されているらしく、通じないみたいだし…。

「おい……黙って聞いてくれ」

その時、水たまりの傍で座り込んでいた、兵士さんが囁きかけてきた。
話を聞くと、どうやら、この水たまりは、ドライボーンの池に通じているらしい。
全員で逃げると、アマルジャ族に感づかれてしまうから、ここから、私一人で抜け出して、準備を整えて助けに来てほしいとの事だった。

私は、静かに頷くと、慎重に、暗闇の中を進んで行ったのだった。

 

「ふぅ…」

程なくして、東ザナラーンへと脱出した私は、状況が切羽詰まっている事もあり、急いで街へと向かった。

ウルダハに着いた私は、急いで装備を整えながら、クイックサンドで協力してくれる冒険者を募った。
突然の、急なお願いにも拘らず、カノンノさん、ぽよさん、ナンテさんの3人の冒険者さんが、協力を申し出てくれた。

準備を整えた私達は、再び、東ザナラーンへと向かい、抜け道を通って、不滅隊のみんなが捕らえられているところに戻った。

とりあえず、皆の縄を解こうとしたのだけれど、タイミング悪く、ぞろぞろとアマルジャ族が姿を現してしまった。
どうやら、儀式の準備が整ってしまったみたい。
ここで、抵抗することも考えたけど、アマルジャ族の数も多いし、不滅隊のみんなも縛られている状態だ。
下手に抵抗して、被害が出ることを心配した私は、取り合ず、大人しく連行される振りをすることにした。

幸い、カノンノさん達には、隠し通路で待機して貰っていたので、アマルジャ族には見つかっていない。
そのまま、身を隠しながら、様子を見て貰う事にした。

 

そして、アマルジャ族達の儀式が始まった。
アマルジャ族達は、とても回りくどい言い回しをするので、あまりよく解らないのだけど、どうやら、彼らの神に祈りを捧げているみたい。

ふと、傍らに視線を移すと、ウグストと裏切者の不滅隊隊員が、私達と同じように縄をかけられ、転がされていた。
どうやら、誘拐事件の真相を暴かれた責任を取らせるつもりらしい。

「お前ら話が違うぞ!! おい! くそっ……!」

因果応報。
そんな言葉を思い出しながら、私は、彼らから視線を戻した。

そして、視線を戻した先で、私は驚愕の光景を目にした。

「……あれは……黒い…お日様……?」

時間的には、まだ、お昼のはずなのに、妙に薄暗い事に気が付いた私は、空を見上げて目を丸くした。
そこには、いつもの太陽の姿はなく、細いリングの様に、周囲だけ輝かせた、真っ黒な太陽が存在していたのだった。

 

「創世の業火をまといし、猛き神よ!我が父祖に「戦士の炎」を灯したもうた、いと高き神よ!
焔神イフリートよ、来たりませ……!」

私が、驚きで身動ぎ一つできなくなっている中、司祭と思われるアマルジャ族によって、儀式は着々と進んで行く。
そして、アマルジャ族が、声高らかに杖を掲げると、黒い太陽に変化が起こった。
中心部で、ボッと炎が生まれたかと思った瞬間、紅蓮の炎が、太陽全体に広がり、全ての飲み込んだのだ。

唖然と見守る中、その紅蓮の炎の向こうから、何かが飛び出してきた。

火の玉となって、空を駆け巡ったそれは、最後に、空を爆発させて、地上へと落ちてきた。
轟音と土煙を上げ、大地を震わせて降り立ったそれは、最初、巨大なトカゲの様に見えた。

しかし、トカゲというには、あまりにも人に近い形をしているそれは、明らかに異形の生物だった。

焔神イフリート。

これが、アマルジャ族が神と崇め、人が蛮神と呼んで忌み嫌う、焔の神。

 

その、圧倒的な存在感に、私は固唾をのんで立ち尽くすのだった。

 

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