異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

死者の迷宮

「よお、お前も冒険者だろ? それも、結構な苦難をくぐり抜けていると見た……! お前のような腕利きに、似合いのヤマがあるぜ?」

グリダニアのカーラインカフェで、とある冒険者に声をかけられた事が、それの始まりだった。

グリダニアが建国される以前、このあたりには、「ゲルモラ」と呼ばれる地下都市が存在していたという。
グリダニアのルーツとも言われる、その地下都市の場所は、長年、不明だったのだけど、第七霊災の折に、南部森林に空いた大穴の先に、その地下都市らしき遺跡が発見されたことで、ニュースになっていたのを覚えている。

そういえば、後から聞いた話だけど、タムタラの墓所で最後に出てきた魔物。
異教徒たちによる儀式のせいで、あんな姿に変えられてしまっていたけど、あれは、ゲルモラ時代の王様で、イクサル族をこの地から排したと言われる、英霊だったらしい。
タムタラの墓所自体も、ゲルモラ時代に作られたものだし、他にも英霊が数多く埋葬されているみたい。

話を戻すと、どうやら、そのゲルモラ遺跡に新しい階層が発見されたらしい。
ところが、そこは特殊な結界に守られていて、調査隊は勿論、鬼哭隊ですら手を焼いているんだそうだ。
それで、冒険者にも協力の声がかかった…という事みたい。

 

「私を訪ねてきたということは、迷宮調査の志願者か……。協力に感謝する……」

南部森林のクォーリーミルにいた、調査隊の隊長に話を聞くと、やっぱり、相当に手こずっているみたい。
特に、内部に張られた特殊な結界は、一種の幻術のようなものらしく、普段の力が出せないばかりか、通常の武具も役に立たないらしい。
一応、エーテルを具現化出来る魔器があるらしく、それであれば通用するらしいけど、身体能力に関しては、戦いながら、勘を取り戻していくしかないみたい。

これは、一人では、ちょっと無理かなぁ…。

そう思った私は、ハルさんに声をかけ、手を貸して頂くことにした。
さらに、私と同じように、遺跡調査の噂を聞きつけてやってきたという冒険者、アッシュさん、マシャさんにも声をかけて、共に遺跡調査に挑戦することにした。

 

「ここが、ゲルモラ遺跡…」

地上に開いた大穴から、遺跡の入り口にある転送装置を抜けると、そこは小さな部屋だった。
ここは、こんな感じの小さな部屋が、ブロック状に組み合わさって構成されているらしく、各階層にある、転送装置を使わないと、下の階へは降りられないらしい。

その転送装置も、安全対策の為なのか、近くに魔物が存在していると起動できない仕組みになっている様で、自ずと戦闘は避けられない状態だった。

まだ、浅い階だから、魔物の数も少ないし、強さも大したことはないのだけど、一説には、50階層以上あるといわれている遺跡なので、気は抜けない。

 

「……あれ? ここ、何か埋まってる?」

そんな中、とある階層を進んでいる時、ふと、足元に違和感を感じた。
どうにもそれが気になるので、軽く床を調べてみたところ、そこには、古びた宝箱が埋もれていたのだった。

これまでにも、宝箱自体は、ちょこちょこ見かけていたのだけど、そこに入っていたのは土器ばかりで、財宝めいたものは一つもなかった。
最初、この宝箱も同様のものなのかと思ったのだけれど、なんだか、ちょっと様子が違うみたい。

「どれどれ…」

ハルさんが、期待を込めながら、宝箱に手をかけ、慎重に開いていく。
偶に、罠のかかっている宝箱もあるので、注意が必要だ。
幸い、この宝箱には、罠はかかっていなかったようで、すんなりと蓋は開いた。

「……なんだろこれ……」

しかし、宝箱の中に入っていたのは、どれも、イマイチよく解らないものばかりだった。
ただ、土器とは、また違うもの様ではある。

これも、調査隊の人に見てもらう必要がありそうね。

私達は、宝箱の中身をそれぞれ分担して荷物にしまい込むと、先を進むことにしたのだった。

 

 

 

「おー。なんか広いねー」

アッシュさんが、天井を見上げながら、声を上げる。

遺跡は、10階層目で、大きく様子を変えてきた。
そこは、今までと違って、とても大きな部屋が一つだけある状態みたい。
天井も高く、まるでタムタラの墓所の最下層にあった、英霊と戦った、円形舞台の上にいるかの様だった。

…あ。なんか、いやな予感がする…?

なにかデジャヴの様な疑視感を感じながら、上を見上げていると、突然、天井にあった模様が動き出すのが見えた。
一瞬、状況の把握が出来なくなったけれど、それも、その模様が襲い掛かってくるまでの、少しの間だけだった。

天井に描かれていたと思っていた模様は、実は、巨大な魔物の翅の模様だったようで、翅を広げたその魔物が、砂埃を巻き上げながら、襲い掛かってきたのだった。

「ゲートキーパーってやつかな!?」

ハルさんが、戦闘態勢を取ながら、声を上げる。
たしかに、広い円形舞台といい、10階層目というキリの良い階層である事といい、ゲートキーパーである可能性は高そうだ。

と、いう事は、この先も、一定階層間隔で、ゲートキーパー的なボスが存在しているのだろうか。

なんてことを考えている場合じゃない。
今は、目の前の敵に集中しなくちゃ!

 

 

 

「倒した~!」

幸い、今回の敵は、単純に大きいだけで(それだけでも十分に脅威だけど)、特殊な攻撃とかはしてこなかったので、さほど苦労はせずに撃破出来た。
この先も、こう上手くいく保証はないけれど、とりあえず、今は、倒せたことに安堵しても良いよね?

 

「一旦、地上に戻ろうか」

 

私達は、ハルさんの提案に乗って、一度、地上へと戻ることにしたのだった。

地上に戻った私達は、早速、探索中、手に入れた土器や情報を、調査隊の人に報告した。
彼らの話では、土器には特殊な魔法が封じ込められているらしく、壊して使う事で、その魔法を発動させることが出来るらしい。

その効果は様々で、防御力を向上させたり、魔物を別の姿に変えたりと、多種多様なようだ。
土器自体は、調査隊もすでに手に入れていて、研究も進んでいるらしい。
従って、新たに持ち帰る必要もないそうなので、次回からは、探索に役立ててしまっても構わないそうだ。

そして、隠されていた宝箱から出たものはというと。

「こちらは、ゲルモラ時代のドレスと……凄い! 心力のマテリジャですよこれ!」

調査隊の鑑定士の人が、興奮気味に伝えてくる。

「おお! イーサン、凄い!」

それを聞きつけたハルさん達が、驚きと祝福の声を上げる。

「え? そうなんですか?」

マテリジャが、マテリアの事なのはなんとなく判るんだけど、そんなに凄いものなのかしら…。

「貴重なマテリアだよ! 今なら、マーケットで数万ギルで取引されているんじゃないかな?」
「すうまんぎる!?」

思わず驚いて、マテリジャを取り落としそうになってしまった。
そ、そんな貴重なもの、頂いてしまって良いんだろうか…。

ドキドキしながら、私は、それを大事にポーチへとしまったのだった。

「ところで、ドレスはどんな感じ?」
「そういえば……わぁ、素敵!!」

マテリジャと共に受け取ったドレスを広げてみると、それは、真っ赤な、フォーマルなドレスだった。
古代から宝箱に入っていた割には、解れ一つも無く、今すぐに袖を通しても問題なさそうだった。

というか、着てみた。

「おー。かわいい!」

ハルさん達の賞賛の言葉に照れながら、我ながら、満更でもない気持ちで、自分の姿を見かえすのだった。

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