異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

星芒祭 前編

「失礼ですが、もしやあなたは冒険者ではありませんか?」

星芒祭に賑わう、ウルダハのルビーロードで、とあるミコッテさんに声をかけられた。
彼女が言うには、星芒祭実行委員会で用意した、子供たちへの催し物の荷物が無くなってしまったらしい。
彼女達も探してはいるが、なかなか見つからないらしく、事件性も考えて、ある程度腕の立ちそうな冒険者に声をかけているのだそうだ。

私は、二つ返事でその依頼を引き受けると、さっそく、薬学院の印が入っているという木箱を探し始めた。

 

木箱は、ルビーロードの端、雑多な荷物が置かれている中に、隠されるように置かれていた。

「だれが、こんなところに…」
「待って! 冒険者さん、その荷物を持っていかないで!」

そう思いながら、その箱を手にかけようとしたとき、後ろから男の子が声をかけてきた。

「この荷物を、ここに隠したのは、君? この荷物は、星芒祭で使う、大事なものなのよ?」
「えっ!? そうなの!? 薬学院の印が入っているから、てっきり薬学院のものなのかと……迷惑をかけちゃって、ごめんなさい」

そう言いながら、男の子は、素直に謝ると、駆けて行ってしまった。

まぁ、事件性もなさそうだし、軽い悪戯だったのかな?
そう思った私は、特に追及はせず、荷物を薬学院へ届けに向かった。

 

「……あぁ、よかった。これで子どもたちを、悲しませずにすみそうです」

薬学院の前にいた、黒髪の医師に荷物を手渡すと、安堵した様に笑みを浮かべた。
荷物がどこにあったかなど、その辺りの事情を掻い摘んで説明すると、なにやら心当たりがあったようで、頤に手を当てて、何かを思案している様だった。

「……冒険者さん、この後のご予定はありますか? ひとつ、私の方から依頼したいことができまして……」

そして、なにかを思いついた様で、改めて私に依頼を伝えてきた。

「良ければ、この服を着て、聖者の従者に扮して、薬学院に入院している子供たちに、プレゼントを配ってあげて欲しいのです」

そういって、お医者様は、私に、星芒祭にまつわる衣装を手渡してきた。

ああ、これ、とっても可愛いなぁ。
思わず、ウキウキしながら、衣装を纏った自分の姿を見下ろしていると、お医者様が、「その衣装はお礼に差し上げますよ」と付け加えて来た。

「ありがとうございます!」

子供達より先に、私が星芒祭のプレゼントを貰っちゃった(笑)

 

 

 

「わぁ!! ありがとうございます!」

可愛いローブを着て、ウキウキ気分のまま、私は、院内の子供たちにプレゼントを配って回った。
みんな、やっぱり入院しているから、今年は貰えないと思っていたようで、とっても喜んでくれて、こっちまで嬉しくなってしまった。

「あれ? 1個余っちゃった?」

院内の子供たち全員に、プレゼントを配り終わったのだけど、何故か手元にはまだプレゼントが残っている。
それをさっきの先生に伝えると、やはり…となにか心当たりがあるようだった。

「そのプレゼントは、ローヴェルくんという男の子の分なのですが、どうやら、病院を抜け出しているみたいなんです。たぶん、冒険者さんが出会った男の子というのも彼の事でしょう」
「なぜ、病棟を抜け出してまで、悪戯を……いえ、今はそんな事よりも、彼の体の事が心配です。一緒に探してもらえませんか?」

そういう先生と共に、私は、ローヴェルくんを探しに、再び、ルビーロードへと向かったのだった。

 

 

意外と簡単に、ローヴェルくんは見つけることが出来た。
星芒祭を楽しむ親子を覗き見ていた様だけど……なんか、寂しそう…?

声をかけると、彼は素直に病棟に戻ってくれることを了承してくれた。
その事を、まだ、彼を探していた先生に告げると、喜び勇んで、病棟へと戻っていったのだった。

 

 

 

これで一件落着かな~?

そんな事を想いながら、病院の扉を開けた私に、先生とローヴェルくんが言い争っている姿が飛び込んできた。

「嘘つき! 心配なんて、してないくせに!」

びっくりして動けないでいると、ローヴェルくんが叫ぶように声を上げ、先生の元から走り去っていってしまった。
その直後、何かが倒れる様な音が耳に届く。

振り返ると、そこには床に身を横たえるローヴェルくんの姿があった。

「!! ローヴェルくん!!」

先生の、逼迫した声が、病棟に響き渡ったのだった。

 

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