異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

星芒祭 後編

「……ローヴェル君はもう大丈夫です。処置が早かったおかげで、大事には至りませんでした。じきに、目を覚ますでしょう」

それを聞いて、ホッと胸をなでおろす。
しかし、先生は、厳しい表情を浮かべたまま、何かを考えている様だった。

 

「……冒険者さん、少しよろしいですか」

そういって、先生は、病室から外へと場所を変えた。

先生が言うには、ローヴェルくんの病気の治療自体は、そんなに難しいものではないらしい。
ただ、その特効薬になる薬草が希少で、なかなか手に入らないのだそうだ。
それ故、どうしても治療が長期化しがちで、ローヴェルくんも長い闘病生活を送っているという。

これまで、頑張って病気と闘ってきた彼を知っているだけに、先のような、投げやりな態度がどうにも解せない先生は、私に、他の子供たちに理由を聞いてみてほしいと相談を持ち掛けてきたのだった。

 

子供たちに話を聞くと、どうやら、ごく最近まで、彼はすごく上機嫌だったらしい。
ただ、ある時を境に、急に暗く、落ち込むようになったのだとか。
その原因までは判らないけれど、なにかベットの下に何かを隠しているらしい所までは聞けたんだけど…。

「……さすがに、これに手を付けるのは……」

ベットの下には、一通の封筒が隠されていた。
多分、この手紙がなにか重要なヒントになるんだと思うんだけど……流石に、人の手紙を勝手に見たりするわけにはいかないよね……。

 

手紙の事を先生に相談すると、先生は、ここで待っていてくださいと私に告げ、部屋を出ていった。
そして、少しした後、先生は部屋に戻ってきて、どうやら、ローヴェルくんが問題行動を起こすようになったのは、彼のお父さんが見舞いに来られなくなったことが原因の様だと告げてきた。
ローヴェルくんの心の傷を癒すには、お父さんに見舞いに来てもらうのが一番だという先生は、お父さんの居場所について心当たりのある人の力を借りるといって、外に出ていったのだった。

その後、ローヴェルくんのお父さんが、リムサ・ロミンサの港にいる事を掴んだ先生に、病院を離れられない自分の代わりに、迎えに行ってほしいとお願いされた。
あまり、時間の余裕もなさそうなので、私は、すぐさま、リムサ・ロミンサへと向かったのだった。

 

 

「ローヴェルが!?」

リムサ・ロミンサで、ローヴェルくんのお父さんに会う事が出来た私は、お父さんに事情を説明し、お見舞いに来てくれるようにお願いした。
しかし、お父さんは、ラハザンに行くのは、仕事だけではなく、ローヴェルくんの特効薬の薬草を手に入れるためでもあるため、ウルダハに戻るわけにはいかないという。
お父さんから、ローヴェルくんへの贈り物を手渡された私は、再び、病院へと向かうのだった。

 

 

 

「お帰りなさい。……お父さんは……そうですか……そういう事であれば、そのプレゼントは、冒険者さん手から、ローヴェルくんに渡すのが良いでしょう。そろそろ、彼も目を覚ますはずです」

先生に事情説明すると、先生は、その贈り物は、私の手から渡すべきだと、私をローヴェルくんのところへ連れて行ったのだった。

「……この贈り物はなあに?」

気が付いたローヴェルくんに、お父さんからの贈り物と共に伝言を伝えた。
しかし、彼の表情は暗いままだった。

「……愛してるだなんて、そんな嘘つかなくても良いよ。お父さんは、僕の事が嫌いなんだ……」
「それは違う、違うんだよ。お父さんは、誰よりローヴェル君のことを愛しているんだ」

先生が、ローヴェルくんの言葉を否定する。

「じゃあ、なんで約束を守ってくれなかったの?」

ローヴェルくんが、訴えかける様に、先生に問いかける。

「きっと、お父さんも会いたかったと思うよ。でも、苦しむローヴェル君を、一刻も早く救いたいからこそ、お父さんも我慢して、薬草を買いに行くんだ」

その目をまっすぐに受け止めながら、先生がその問いに答える。
本当? と、救いを求める様に、私の方へと視線を投げてきたローヴェルくんに、私は頷いて、それを肯定した。

「お父さん、本当に僕のことを……。そっか……嫌われたわけじゃないんだ……」

そう呟くローヴェルくんに、安堵した笑みが浮かぶのを見て、私と先生にも笑みが浮かぶのだった。

 

 

その日の夜。
先生にお願いされた私は、子供たちに、外の世界の話、冒険の話を聞かせてあげることにしたのだった。
子供たちは勿論、先生まで、私の冒険談を楽しんで聞いてくれたようで、とっても喜んで貰うことが出来た。

そして、すっかり遅くなってしまったので、そのまま、病棟のベットお借りする事にしたのだった。

 

 

 

 

こんな夢を見た。

 

 

 

 

ふと、目覚ますと、枕もとに何かが立っている。
それは、見たこともない姿をしている獣だった。

わたしが、目を覚ましていることに気がついた獣は、こちらを、じっ…と見てくる。
わたしは、その、まっすぐに向けられた視線から、目をそらす事が出来ず、身じろぎ一つ出来ない。

だんだんと…だんだんと…その目に吸い込まれるように、意識が、その瞳孔に吸い込まれていく。

やがて、わたしは、意識を手放し、再び、夢の夢の中へと沈んでいったのだった。

 

 

 

 
翌朝、目を覚ますと、部屋のツリーの下に、私宛と思われる、贈り物が置かれていた。
その事を先生に聞いてみると、冒険談のお礼にと、子供達からの贈り物だという。

夢のことを先生に話したら、もしかしたら、贈り物を置くときの物音を聞いて、そんな夢を見たのかもしれませんねと笑っていた。

 

……夢。
うん……夢…だよね……?

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