「よお、久しぶりだな。今日は、また、密猟者でも追っかけて来たのか?」
南部森林にある、バスカロンドラザースに顔を出した私を、店主のパスカロンさんが出迎えてくれた。
クラクシオちゃんを守り、仮宿に帰った私達は、仮宿のシルフ達の長老、長ちゃまと呼ばれるシルフが、行方不明になっている事を知った。
コムシオちゃんが言うには、だいぶ前に、不穏な感じがすると言って南部森林へと向かったらしいのだが、それから音沙汰がないらしい。
こんなに長期間、長ちゃまが、仮宿を留守にすることはなかったらしく、シルフ達は、とても心配しているのだそうだ。
私達は、一度、双蛇党に戻り、事の顛末を報告した後、すぐさま、この南部森林へとやってきたのだった。
「……なに、シルフの⻑老が行方知れずだって? そいつは良くない話だな。よし、俺も調べておいてやろう」
バスカロンさんはそういうと、協力を申し出てくれた。
私達は、その好意をありがたく受けると、酒場周辺で、なにか手掛かりがないか、調査を開始したのだった。
調査を進めていくと、幾つかの目撃情報が入ってきた。
やはり、長ちゃまが、この南部森林に来ていたことは間違いではないみたい。
ただ、目撃されたという場所が、どこも、普段、シルフ族が近づくような場所ではなかったみたい。
とりあえず、何かしら痕跡がないかと、私は、その目撃された場所を調べてみる事にしたのだった。
「……これは……?」
長ちゃまが目撃されたという場所には、複数人と思われる、真新しい足跡が残されていた。
もちろん、森に住むシェーダー族や、今回の件とは関係のない人のものである可能性は高いのだけど、ただ、通りがかっただけというには、足跡が集中しすぎている感じがする。
なにかを探している…?
行ったり来たりしている様に見える足跡から、そんな事を感じたとき、突如、背後に何者かの気配を感じた。
「ち。冒険者か…!!」
慌てて振り返ると、そこには、黒い服を纏い、バイザーで顔を隠した槍術士が槍を構えていた。
あれ? この恰好……どこかで見たような…?
明らかに敵意を向けてくる相手に戸惑いながらも、戦闘態勢をとる。
森に住んでいるシェーダー族でもないし、密猟者という感じもしない。
「どちらさまですか?」
「答える義理はない。姿を見られたからには、口封じをさせてもらう」
その槍術士は、取り付く島もなく、問答無用で襲い掛かってきたのだった。
私は、返り討ちにした槍術士を見下ろしながら、なにが起きているのかを整理することにした。
まず、長ちゃまの痕跡は見つけられなかった。
痕跡を探していたら、正体不明の輩に突然襲われた。
以上。
「……全然わかんない……」
私は、その場に、頭を抱えてうずくまりたくなったのだった。
「……そいつは、帝国兵じゃねーか!?」
「あ!!」
バスカロンさんに、事の顛末を説明すると、ひどく驚いた様子で聞き返してきた。
そう聞いて、私も劇的に思い出した。
仮宿の近辺で目撃され、怪しい荷物を前にしていた、妙な鎧を着た男たちの事を。
「帝国兵が、いったい何の目的で……まてよ、目撃地点で出くわしたってことは、奴ら、シルフを追っているのか……?」
そう言いながら、頤に手を当てつつ、思案するバスカロンさん。
この辺りは、帝国の基地からも離れているし、途中の監視所や、見回りの衛士もいる。
一体どうやって、こんな奥地に入り込んでいるのかが、気になっている様だった。
「……そうか……そういうことか。手引きしてやがる奴がいるな。……しかも、犯人はおそらくグリダニアの衛士だ」
そして、衝撃的な言葉が、バスカロンさんの口から告げられたのだった。