異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

バスカロンドラザースの掟と結束

帝国に手引きしている不届き者がいる。
しかも、衛士という、国を守るべき立場にいる人間が、犯人だという。

私は、その衝撃的な言葉に戸惑いつつも、ウルダハで、背信行為を行っていた商人の姿を思い出していた。

バスカロンさんが言うには、最近、やたらと金使いが荒くなった、ローレンティスという衛士がいるらしく、その人が怪しいという事だった。

長ちゃまの行方を探すのも大事だけど、こちらの問題も、放っては置けないよね…。
長ちゃまの件は、イダさん達に任せて、私は、その衛士を探すことにしたのだった。

 

探し始めると、そのローレンティスという衛士は、拍子抜けするほどあっけなく見つけることが出来た。
ただ、話しかけた瞬間、なにか後ろめたいところがあるかのように、挙動不審になり、足早に姿を消してしまったのだった。

確かに、これは怪しいかも。

私は、彼に気が付かれない様に、気配を忍ばせながら、後をつけていったのだった。

 

「そろそろ約束の時間だけど……えへへ、巡回経路の情報と食料を売るだけで、こんなに金をもらえるだなんて……いやぁ、ガレマール帝国軍ってスゴイなぁ」

そう言いながら、大量の物資を前ににやつく、ローレンティスの姿を見つけた私は、その物資に見覚えがあるのを気が付いた。
仮宿の近くで、帝国兵たちが受け取ろうとしていたものと同じラベルが張られていたのだ。

「これは、どういうことですか?」
「うあぁぁぁ! さっきの冒険者!? こここ、これはその……。どどど、どうしよう……そうだっ!」

突如現れた私に声をかけられ、飛び上がらんばかり驚いたローレンティスは、動揺を隠せない様だった。
さらに、問い詰めようとする私を前に、彼は、とんでもない事を口走ったのだった。

「たすけてー! 山賊に襲われてまーす! 帝国軍のみなさーん、ここでーす! 僕はここにいまーす!」

あろうことか、グリダニアの衛士が、帝国軍に助けを求めるという、決定的な行為。
この時点で、彼への疑惑は、確信へと変化したのだった。

 

「な、な、なんて強さなんだよ……くっ」

帝国兵と戦っている最中、ローレンティスは旗色が悪いと判断したのか、再び、姿を消した。
私は、帝国兵を退けると、逃走した彼の後を追いかけたのだった。

 

「もう、逃げられませんよ」

朽ちたトレントと呼ばれる、森の住人が神聖視している枯れたトレントのいるエリアの近くで、私はローレンティスを追い詰めたのだった。

追い詰められた彼は、遂に観念したようで、自分の悪行とその理由を、吐露し始めた。
彼なりにいろいろと思うところがあったのだとは言うけれど、結局は、お金が欲しいという欲望に繋がっている事に、私は嫌悪した。

どんな理由があろうと、自分の利益を得るために、国や住民を危険に陥れるような行為は、到底、許すことは出来ない。

…後は、双蛇党の衛士に判断を委ねるべきかな。

そんな風に考えながら、ローレンティスが、「すまなかった」と謝罪の言葉を口にするのを聞いていると、突如、彼が笑い始めた。

「……なーんてね! 帝国軍のみなさーん、いまでーす! さっきの冒険者を誘い込みましたー!」

どうやら、とことん、この人の性根は腐っているみたい。
つらつらと言葉を重ね、謝罪の言葉すら口にしたのは、結局は、時間稼ぎの為だったという事のようだ。

さっきとは違い、しっかりと準備を整えた帝国兵に、ぐるっと取り囲まれている状況を見て、怒りと悔しさが綯い交ぜにした感情が胸にこみ上げてくる。
一旦、退いて、態勢を整えるべきだけど、何処を突破口にするべきか…。

「やれやれ、やっぱりそういうことかい。帝国軍とつるんでいたとはねぇ」

その時、突如、二人の男が姿を現した。
どうやら、バスカロンさんに所縁のある人たちの様で、彼への義理立てだと言って、助太刀に駆けつけてくれたみたい。

「さ、山賊ごときが加勢したところで、帝国軍に敵うもんか!」

突然の増援に、色めきたつローレンティス。
そこに、彼の虚勢を否定するように、再び声が響く。

「まったく、騒がしいこと……。バスカロンへの義理立てよ、私たちも手を貸すわ」

そう言いながら現れたのは、南部森林に拠点を構える密猟団の一団だった。

「密猟団クァールクロウまで!? どうして……!」

数の圧倒的有利を覆されたローレンティスは、ひどく狼狽えながらも、帝国兵に何かを言われて、改めて槍をこちらに向けてきた。

そうして、裏切者vsならず者という、グリダニア衛士が見たら、頭を抱えてしまいそうな構図の戦いは、始まったのだった。

 

 

「そんな……帝国軍を倒してしまうだなんて……」

戦いは、熾烈を極めたけれど、地の利がある、山賊さんや、密漁団のおねーさん達のおかげで、帝国兵たちを倒すことが出来た。
それを目の当たりにしたローレンティスは、今度こそ観念したようで、抵抗する気も起きなくなったみたい。

「……それにしても、なんで山賊や密猟者がいっしょに。……そうか、バスカロンの親父の……。金がなくても、人の心は掴めるってことなのか……」

ローレンティスは、戦いに敗れたこと以上に、ならず者であるはずの山賊や密猟者が、手を組んだことにショックを受けている様だった。

「……僕は、これから双蛇党に出頭するよ。いや、今度は騙すつもりはないよ。本当さ」

やがて、ローレンティスはなにかを悟ったのか、そんな言葉を零した。
とはいうものの、彼のこれまでやってきたことを考えると、とてもその言葉を信用することが出来ず、どうしたものかと思案していると、山賊さんが声をかけてきた。

「心配するな。奴がちゃんと出頭するか、俺らが見張る。……もし、逃げる様なら、今度こそ只じゃ済まさないがな」

そういって、山賊さんは、双蛇党へと歩き始めたローレンティスを追いかける様に歩いて行ったのだった。

 

この件は、これで解決…かしら。
なんだかもう、いろいろとわだかまりの残る事件だったなぁ……。

私は、空を仰ぎ見ると、ひとつ、ため息をついたのだった。

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