異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

若き血の暴走

壊神ラールガー。
彗星と破壊を司ると言われる、十二神の一神。
破壊神と揶揄する人もいるけれど、私は、悪しきことを破壊し、希望をもたらす神なのではないかと思っている。

国を奪われ、アラミゴを追われる事になっても、アラミゴの人達が、未だに、強くラールガー神を信奉しているのも、ガレマール帝国を倒し、祖国奪還という希望を見ているからなのかも知れない。

 

クォーリーミルで、紹介状を書いてもらった私は、再び、リトル・アラミゴへとやって来た。
怪訝そうな顔をしていたグンドバルドさんも、かつての部下であった、メッフリッドさんからの紹介状を、私が持ってきたことで、すこし警戒を解いてくれた様だった。

「お前が探している仮面の男……よく似たよそ者と、うちの若い衆が密会していると聞いた。私の名を出せば、本人たちから話を聞けるだろう」

グンドバルトさんから、仮面の男、アシエンに関しての手がかりを得られた私は、リトル・アラミゴにいる若者たちに話を聞いて回ることにしたのだった。

 

彼らに話を聞いてみて感じたのは、拒否感よりも、なにかの企みを隠そうとしている感じが強かったことだった。
なんだか、とても嫌な予感がする。

そんな中、ウィルレッドという人が、私を探していると言伝を受けた私は、待ち合わせ場所へと向かったのだった。

「待ってたよ、冒険者さん」

リトル・アラミゴから少し離れた場所の岩陰で、その人、ウィルレッドさんは待っていた。
ただ、なにか様子がおかしい。

「なぁ……オレたちのことを嗅ぎまわって、どうするつもりだ? 帝国のスパイか、人拐いの手先か……。どちらにせよ、邪魔させるものかよ ! おい、シメ上げろッ!」

ウィルレッドさんが、そう声を上げると、岩陰から、数人の男たちが姿を現す。
うーん…なにか誤解されている感じなんだけど…。

私を取り囲んだ人達は、みんな、ちゃんとした訓練を受けた風にも見えず、刃物を向ける手も震えている。
血気盛んなのは判るけど、正直、空回りしている感じは否めないなぁ…。

出来るだけ怪我をさせない様に気を付けながら、彼らを返り討ちにすると、ウィルレッドさんはかなり衝撃を受けていたようだった。

「くっ、腕も立つってワケかよ……! 余裕ぶりやがって……くそぉぉぉッ!!」

まるで歯が立たなかったことに、悔しがるウィルレッドさん。

「だが、作戦は続けるぞ! 殴られたって止めるものか……薄暗い洞窟で死を待つだけが、オレたちの一生じゃない!」

そう捨て台詞を残して、ウィルレッドさんは、仲間の人達と共に、走り去っていったのだった。

…作戦…ますます、嫌な予感がするなぁ…。

 

「……なんだと? ウィルレッドが、そんなことを……。良からぬ企みとは思っていたが、まさか刃を向けるとは」

ウィルレッドさん達が何かを企んでいるらしい事を、グンドバルトさんに伝えると、その事態の深刻さに厳しい表情を浮かべるのだった。

「グンドバルド、さま…………」

その時、一人の女性がグンドバルトさんの元へとやって来た。
どうやら、3日も姿を消していたらしい彼女は、リトル・アラミゴ付近を根城にしている、骸旅団という盗賊団に攫われていたらしい。
そのひどい様子に、グンドバルドさんも、かける言葉がなかなか出ない様だった。

そして、この事件が、ウィルレッドさん達の計画していた企みを実行に踏み切らせる切っ掛けとなったのだった。

 

「……ウィルレッド。生きているのは、これだけか?」

リトル・アラミゴを飛び出していったという、ウィルレッドさん達を追いかけ、外へと出た私達は、アマルジャ族の集落、ザンラクへと架かる吊り橋の前で、息も絶え絶えに膝を付いている、ウィルレッドさん達を発見した。

「違う……違うんだ……こんなはずじゃない……。オレたちはクリスタルを手に入れて……帝国を……」
「ウィルレッド!!」

茫然と独り言をつぶやくウィルレッドさんに、グンドバルトさんの激しい叱咤の声が飛ぶ。
その声に、肩を震わせ、我に返ったウィルレッドさんは、クリスタルと祈りを捧げれば、ラールガー神を呼び降ろす事が出来ると聞き、クリスタルを盗みに入ったのだと弁明した。

……神降ろし……。

つまり、彼らの言っていた作戦とは、蛮神召喚と同じように、十二神を降ろし、その力をもって帝国を打ち破ろうとするものだったみたいだ。
そんな知識を、どこから得たのかは判らないけれど、たぶん、仮面の男、アシエンが関係しているのは間違いないだろう。

ただ、なぜ、彼らに神降ろしをさせようとしたのかは、判らないけれど…。

「逃がさぬぞ、厚顔無恥なる人の子よ! 我らが御神に捧ぐ、聖なる供物を狙いし罪……その魂をもって償わせん!」

その時、彼らを追って来たのだ思われる、アマルジャ族の集団が現れた。
悪いのはウィルレッドさん達だけれども、流石に命をもって償えというのは聞き入れるわけにはいかない。

私達は、アマルジャ族を相手に、戦う事になったのだった。

 

「もう隠し事はなしだ、ウィルレッド。お前に計画を与えたのは仮面の男だったのだな……?」

アマルジャ族を撃退したあと、リトル・アラミゴへと戻った私達は、ウィルレッドさんに事の詳細を聞くことにしたのだった。

「……ああ、そうだよ。仲間と話しているところに、アイツが現れたんだ。力を欲する者に、知恵を与えると言っていた」

仮面の男、アシエンは、日々、不満を募らせる彼らの元に現れ、神降ろしをすれば、帝国を倒せると吹き込んだらしい。
ただ、アシエンはすぐに姿を消したので、その後の行方は知らないとも言っていた。

「結局、騙されただけさ……。今度こそ変えられるなんて、どうして信じたんだろうな」

そういって、ガックリと肩を落とすウィルレッドさん。

「ウィルレッド。我々の故郷はアラミゴだが、それがお前のすべてではない。どう生きるかは、お前次第だ。何を求めるにしても、困難な道になるだろう。だが、お前の命が、異郷の冒険者に救われたこと……忘れずにいるといい」

そんなウィルレッドさんに、グンドバルドさんが声を掛けると、彼は、「考えてみるよ」と答え、この場を離れていったのだった。

 

結局、アシエンの足取りは掴むことが出来なかった。
ただ、ここ最近の蛮神問題の活発化を初めとする、様々な問題は、もしかしたら、アシエンによる人為的なものなのかも知れない。

私は、何とも言えない不安を、感じながら、空を仰ぎ見たのだった。

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