「あぁ、お前が副団⻑の言ってた冒険者か。エオルゼア三大珍味を集めに来たんだろう?」
「だが、ここまで来てもらって悪いが……俺は、お前の珍味探しに協力する気はない。てめぇで勝手に、なんとかするんだな」
南ザナラーンにあるザゴリー砂漠の入り口にある、忘れられたオアシス。
そこにいるという、元海雄旅団の団員、ウ・オド・ヌンさんを訪ねた私は、いきなりの洗礼を受けていたのだった。
「なんせ俺はこの「オアシス」を仕切る、ウ族の「ヌン」……つまり族⻑だ」
斜に構えて座ったまま、ウさんは言葉を続ける。
「ウ族ってのはな、徹底的な実力至上主義。俺が海雄旅団に入ったのだって、技を磨くためだ。その、ウ族の族⻑を張ってるモンが、昔の上司の言付けひとつで、よそ者を助けちまったら、下のモンたちに示しがつかねぇ」
なるほど。ウさんの言っている事は、十分に理解できる話だった。
「どうしても珍味を手に入れたいのなら、この俺に、てめぇの技のほどを見せてみろ」
「そうだな……ウ族のミコッテが、一人前の狩人になったことを示す儀式がある。こいつをてめぇに課す」
頤に手をあてつつ、ウさんは、珍味の情報を得るための条件を示してきた。
もちろん、私は、その条件をのむことに同意したのだった。
「これで、7匹目っと」
ウさんから提示された条件は、ドレイクの生き血を7匹分集める事だった。
私は、ザゴリー砂漠の南東にある、ドレイクの生息地へと向かい、そこで狩りを行ったのだった。
ちなみに、砂漠での戦闘は初めてだったけど、やはり、足場の悪さに、なんどかヒヤリとさせられた。
広さ的には十分にあるので、遠くから狙い撃つ分には最適な場所ではあるのだけど、肉迫されると、回避に手間取ることが、何度かあった。
ウ族の人は、男女関係なく、この試練を受けるというのだから、やはり、本当に実力主義の一族なんだと感じる。
正直、槍や剣で、この場所で満足に戦えるか、自信ないもの。
血を集めて戻った私は、次なる試練として、アマルジャ族の討伐を提示された。
「こいつを持っていけ」
そういって、ウさんは、一振りのキザルメと呼ばれる形状の槍を手渡してきた。
どうやら、石突のダナド・ガーと呼ばれるアマルジャ族から奪ったものらしく、これを使って、ダナド・ガーをおびき寄せろという事らしい。
「相手は、兵長クラスだ。気合入れていかねーと、やられるぞ」
その言葉を聞いて、つい、槍を持つ手に力が入る。
「奴が身に着けている、蛮風の首飾りを持ち帰る事が出来れば、てめぇを認めて、「珍味」の在りかを教えてやってもいい」
そういって、ウさんは、私を送り出したのだった。
ザゴリー砂漠の東には、アマルジャ族のキャンプがある。
私は、キャンプから程近い位置に、目立つ様に槍を突き立てると、物陰に隠れて、ダナド・ガーがおびき寄せられるのをじっと待っていた。
砂漠の寒さが堪えてきた頃、遂に、ダナド・ガーと思わしき、アマルジャ族が姿を現した。
私は、ダナド・ガーに気づかれない様に、背後へと回り込むと、キリキリと弓を引き、そして急所を狙って矢を解き放ったのだった。
「……フン、石突のタナド・ガーも倒したか。俺が渡した、この「痺れの水薬」を使いこなせたようだな」
私が、蛮風の首飾りを手にしている事に気が付いたウさんは、懐から薬瓶を取り出しながら、得意満面で、そう言った。
「……って、ありゃ? なんでここにまだ「痺れの水薬」が……俺としたことが、渡しそびれていたってのか?」
そして、私に渡したはずの薬瓶を、今、自分が手にしている事に、今さらの様に気が付いたようだった。
「それじゃ、ま、まさかてめぇ……この薬なしで石突のタナド・ガーを……?」
そうですね。
私、その薬瓶見るの、今が初めてですから。
「…………プッ……ぶははははは! なかなか面白い奴だ、気に入った! てめぇの技量、認めてやるよ!!」
暫くの沈黙の後、それに耐えきれなくなったウさんは、高らかに笑い声を上げながら、そう言ったのだった。
その後、2つめの珍味の材料、「ラムトンウォームの肉」の情報を聞き出した私は、三度、砂漠に出た。
そして、ラムトンウォーム、つまり、サンドウォームの雌を倒して、その独特な癖のある匂いを放つ肉を、手に入れたのだった。
ちなみに、ラムトンウォームの肉は、燻製にして使うらしいので、生の時のその匂いは、だいぶ抑えられるみたい。
「はぁ…とっても気持ちいい…」
ラムトンウォームの肉を手に入れた後、私は、キャンプの近くにあるオアシスで、美人のミコッテさんたちと一緒に水浴びを楽しんでいた。
流石に、砂漠をあちこち走り回ったから、髪の奥の方までジャリジャリで気持ち悪かったのよねー。
あ。ヤ・シュトラさんには、秘密で。
のんびり水浴びしてたなんて知られたら、きっと怒られちゃうし…ね。