異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

最高のワインを求めて

「シュコォ、シュコォ……ありがと〜 ありがと〜!」

ドラゴンを倒したことで、野営地に溢れていた魔物たちも落ち着きを取り戻したようで、ほとんどが姿を消していた。
平穏の戻った野営地を見て、ブレイフロクスさんが、感謝の言葉を伝えて来た。

「オマエ けっこう 機転きくな〜! オマエの 「機転」 見届けた〜! オマエ ゴブゴブ珍味 持ってくゴブ!」

そういって、ブレイフロクスさんは、背負っていたかばんから、包みを一つ取り出してきた。

「秘伝製法 門外不出! とてとて おいしい とてとて 臭い! 最高級の 「ゴブリンチーズ」〜!」

そういって、手渡してきた包みからは、確かに独特な匂いが漂ってきている。
私は、それを受け取ると、ヴェイスケートさんの元へと戻ることにしたのだった。

 

「戻ってきたか。ブレイフロクスの問題は解決できたのか?」

コスタ・デル・ソルに戻った私を、ヴェイスケートさんが出迎えてくれた。
私は、問題を解決した事の答えと共に、ブレイフロクスさんから預かって来た包みを手渡した。

「くっ、相変わらず、すげぇ臭いだ……。この臭い、たしかに、三大珍味の最後のひとつ、「ゴブリンチーズ」に違いない」

包みを受け取るなり、クラクラと目を回す仕草を見せる、ヴェイスケートさん。

「鼻が曲がるほどの臭いだが、その分、コクは段違いだ。一度ハマるとクセになるってやつだな……ん?」

きょとんとしながら、その反応を見ていた私に気が付いたのか、ヴェイスケートさんが怪訝そうな表情を浮かべる。

「……なんだか、妙に平然としているな? この匂い、平気なのか?」
「確かに、独特な匂いですけど……それほどでも……」

お父さんが、よく食べていたお酒のおつまみの方が、匂いきつかったし。

「…ま、まぁ。人の好みもそれぞれだしな…」

……なんか、微妙に勘違いされた様な気もするけど……まぁ、いいかな。

 

「これで、エオルゼア三大珍味である、「アダマンタスの大卵」「ラムトンウォームの肉」そして、「ゴブリンチーズ」が集まったわけだ」

そう言って、ヴェイスケートさんが、腕を組んだ。

「だが、まだお前に、蛮神タイタンの情報を教えることはできない。特別な晩餐には、最高の酒が必要不可欠だろう?」

私は、お酒は飲まないから、よく判らないんだけど、そういうものなのかしら。
確かに、お父さんも、良いつまみには良い酒だ! って言っていたけれど…。

「最高の酒は、特別な晩餐の調理を担当する、ディルストヴェイツが手配しているはずだ。奴に会って、話を聞いてこい」

そうして、話を聞きに行ったディルストヴェイツさんから依頼を受けて、私は、最高のワインを求めて、ワインポートへと向かったのだった。

 

 

「陽と土に祝福されし匂いと……幾多の戦いの匂い……貴方は、冒険者さんですね? 何か私にご用でしょうか?」

ディルストヴェイツさんが言っていた、元海雄旅団のシャマニ・ローマニさんは、私が声をかけるよりも先に、私に話しかけて来た。
なぜ、私が訪ねて来たのが判ったのだろうと思ったけど、その理由は、すぐにシャマニさんが語ってくれた。

シャマニさんは、海雄旅団での戦いの中で、失明し、傭兵を引退したのだという。
しかし、光を失ったことで、他の感覚が研ぎ澄まされ、今では、目で見える以上に様々な事を感じ取れるようになったのだという。

私が近づいてきたときも、身に付いていた、コスタ・デル・ソルの潮の香りと、ゴブリンチーズの匂い。
そして、まっすぐに自分の方へと向かってくる足音から、三大珍味に使う、最高のワインが目的で来たのだろうと察したのだという。

「しかし…残念ながら、今、私の手元にあるのはセカンドラベル…格下のワインばかりなのです」

そういって肩を落とす、シャマニさん。
どうやら、ファーストラベルの一級品のワインは、全て、ビルギレントという、ワインポートのワイナリーのオーナーに独占されてしまっているらしい。

「あまりお薦めはできないのですが……この際、仕方がないですね。ビルギレントに相談してきてもらえますか?」

そういって、シャマニさんは、そのオーナーに交渉してみてはどうかと、提案してきたのだった。

 

「うん? 誰ですかアナタは? シャマニ・ローマニからの遣いですって? ふん、あの新参者の醸造師ですか」

あー。やっぱり…独占しているっていうから、そんな気はしていたのだけど、予想通りの反応…。

「ワインを譲って欲しいとは……ンふふ、冗談でしょう。どうして、どこのチョコボの骨かも分からない輩に、高級ワインを差し上げなくてはならないのですか? 真の美を知る舌もないような者など、泥水でも飲んでいるのがお似合いですよ。ンふふふふ、さぁ、お帰りなさい!」

なんて酷い事を言う人なのだろう。
こんな言葉を繰る人が選ぶ高級ワインなんて、とても美味しいとは思えない。

その一言で、交渉を続ける気も無くなった私は、無言で踵を返すと、シャマニさんの元へと戻ったのだった。

 

「……やはり、追い返されましたか。彼は、このワインポートを支配する醸造師の権威。たしかにワインに賭ける情熱は素晴らしいのですが……ちょっと性格に難がある上に、絶大な権力まで持っています」

そうして、嫌な思いをさせてしまい、申し訳ないと謝罪してくるシャマニさん。
もちろん、シャマニさんは何も悪くないので、慌ててそれを制止した。

「……冒険者さん、私の光となって、少々手助けしてくれませんか? 私たちで、最高のワインを見つけだしましょう」

そういって提案してきたシャマニさんの言葉に、わたしは頷いて応えたのだった。

Leave a Reply

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください