「いってきまーーーす!!」
青空に映えるような白い幌の下、飛空艇の上から、眼下に広がる黒衣森に向かって、私は手を振った。
想像よりもずっと早く、グングンとスピードあげて空を進んでいく飛空艇は、あっという間に黒衣森を抜け、空の青さとは違う青さに輝く海へと、飛び出していった。
その飛空艇の上で、生まれて初めて見る海に、その青さに、その潮風の香に、私の興奮は最高潮に達するのだった。
「これが、リムサ・ロミンサ…」
やがて、見えてきた白い街の姿に、私は息を呑んだ。
リムレーンのベールと称される、その海都の姿は、本当に美しく、思わず飛空艇から身を乗り出して魅入ってしまった。
リムサ・ロミンサの飛空艇プラットフォームに降り立っても、その興奮は醒めず、潮騒の音と香り、海鳥の鳴き声に、しばらく耳を傾けていた。
そうして、いつの間にか、小一時間近くそうしている事に気が付いた私は、慌てて、親書を届けに走るのだった。
「グリダニアより使者が来るとは聞いていたが、……まさか冒険者とはな。よほど信頼されていると見える。ようこそ。「海の都リムサ・ロミンサ」へ」
衛士さんに案内された、提督と呼ばれる、リムサ・ロミンサの盟主様の執務室には、ルガディン族の女性が待っていた。
傍らには、やはりルガディン族の側近がいて、こちらを値踏みするかのように、鋭い視線を投げかけてくる。
…ちょっと怖い…。
「この国のグランドカンパニー「黑渦団」の最高司令官、都督のメルウィブ・ブルーフィスウィンだ。さっそく要件を聞こうか」
メルヴィブ提督はそういうと、私に要件を話すことを促した。
私は、カヌ・エ様から託された親書を、提督へと進呈した。
「なるほど、カルテノー戦役の戦没者追悼の式典か…」
親書に目を通した提督は、唸るように呟き、腕を組んだ。
「知っての通り、カルテノーの戦いでは、多くの犠牲を払った。軍人も海賊も、そして冒険者も。今日、我らがこうして居られるのは、彼らの犠牲があったからに他ならない。……そうだな。良い頃合いなのかもしれないな」
提督は、そう言葉を綴ると、親書にサインを記し、側近のルガディンさんに手渡した。
「親書の返事は、こちらから責任を持って出しておく。君は、これからウルダハに向かうのだろう? 局長に、宜しくと伝えてくれ」
そう言って、提督は、私を送り出してくれた。
「…緊張したなぁ…」
執務室を後にして、とりあえず、海風の気持ちよさそうなところを探すと、緊張を解す様に息を吐きながら、独りごちた。
こうして、風に身を晒していると、グリダニアとは違った意味で、気分が落ち着いてくる。
特に、打ち寄せる潮騒の音を聞きながら波を見ていると、なんだかとっても癒される感じがする。
「この水平線の向こうにも、沢山の国があるんだよね……いつか、この向こうにある世界、すべてに行けると良いなぁ…」
そう呟きながら、私は、まだ見ぬ海の向こうの世界に思いを馳せるのだった。