異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

動き出す時間

マケルズさんのお使いで、私は、ウルダハに居た。
彼の手にしていた時計を治すためには、細かい作業を行うための道具が必要らしく、それを調達しに、もっとも物流のある所にやって来たのだった。

 

早々に、目的の品である、先細のタガネと、小さなヤットコを手に入れた私は、クイックサンドの一角に陣取っていた。
私が、私であることを悟られない様に、マスクで顔を隠したまま、周囲の会話に耳を傾ける。

『……噂だが、暁の血盟が、帝国に襲撃されたらしい』
『酷いものだったらしいな……誰も生き残らなかったとか……』
『グランドカンパニーも、大慌てらしいぞ…?』

雑多な会話の中に、暁に関するものも聞こえて来たが、あくまで噂話程度のものでしかなく、まだ、半信半疑のままに話をしている様だった。
残念ながら、攫われたミンフィリアさん達の動向を伺えるような情報は無さそうだと判断した私は、一旦、教会へと戻ることにしたのだった。

 

「……頼んでいた品は、手に入ったか? ありがとう、感謝する。すぐ修理に取りかかってみよう」

教会に戻り、マケルズさんに、頼まれた品を手渡すと、彼は、その場で時計を分解して、修理に取り掛かった。
その手つきは、素人目に見ても見事で、動きに迷いがなかった。
たしか、マケルズさんは、自分の名前すらも思い出せないほどの記憶障害を負っている筈だけど……。

「……時計は直ったぞ。持ち主の時は止まっても、世界の時は動き続けている……」

そういって、修理を終えた時計を手に、満足げに笑みを浮かべるマケルズさん。
しかし、次の瞬間、その表情が歪んだ。

「しかし……なぜだ? どうしてなんだ? なぜ俺は……時計を直せる?」
「精巧に重なりあうゼンマイやアンクル……緻密なトゥールビヨン脱進器の鼓動……すべての構造を……なぜか俺は知っている。そして俺の手が、修理法を憶えている……なぜなんだ……」

私がさっき感じたのと同じ疑問。
記憶が無いはずの自分が、なぜ時計を修理できるのか、聞いたことも無いようなパーツの名前が判るのか、理解できない様だった。

少し疲れたというマケルズさんに、時計を預けられた私は、時計の持ち主を埋葬しているという、エルネドさんの元へと向かったのだった。

「……これは時計、ですか? まあ、なんて小さい……こんなものは生まれて初めて見ました」

そういって、時計を受け取ったエルネドさんは、まじまじと、それを眺めていたのだった。

 

それから、しばらくした後、エルネドさんに、身寄りのない遺体の回収の手伝いを依頼された私は、再び、ベスパーベイに立っていた。

 

 

「あんたが、聖アダマ・ランダマ教会からの使いかい? てっきり墓守の兄ちゃんがくるかと思ってたぜ……うん? お前さん、この辺りで見かけたことがあるような?」

砂の家の前には、ベスパーベイの商人さんが待っていた。
商人さんは、私の姿を見知っている様だったけど、警戒のために被っていたマスクのおかげで、正体はバレずに済んだ様だった。

「まぁ、いいか。連絡したとおり、遺体を教会へ持っていってほしいのさ……身元不明者が多くて、処理に困ってたんだよ」

そういって、商人さんは、砂の家の中ではなく、外の物陰を指さす。
そこには、暁のみんなの、無残な姿がそこにあった。

 

「……こんなところに……みんな、ごめんなさい……」

いろいろと事情はあるのだろうけど、こんなところに晒しておくなんて。
思わず憤りかける気持ちを抑えながら、私は、みんなの遺体を、ひとりづつ、街の入り口に止められているチョコボキャリッジに運んでいったのだった。

 

 

全員の遺体を運び出し、教会へと運ばれていく、みんなを見送った後、私は、少し街の様子を見て回った。
砂の家の急襲の事件は、知れ渡るところになっていたものの、既に、その話題は、風化し始めていた様だった。

私は、普段と変わらない様相のベスパーベイの姿を、無感情に眺めつつ、街を後にしたのだった。

 

 

 

ベスパーベイから戻った私に、エルネドさんから、既に遺体はすべて降ろし、埋葬を済ませたと聞いた。
ただ、数が多く、引き取り手も無かったことから、第七霊災で犠牲になった人達の眠る、共同墓地に埋葬されたそうだ。

そして、私は、東ザナラーンの端にある、日神アーゼマの秘石の祀られた丘に来ていた。
秘石の周りには、プラズモイドが漂っていて、まるで、弔われた人が迷わない様に、照らしているかの様だった。

私は、夕闇に紅く染まる丘に膝を付くと、暁のみんなの記憶を思い浮かべながら、ひとりひとりに、祈りを捧げた。

 

どのぐらいそうしていたのだろう。
溢れ出た涙が、すっかり乾いた頃、私は、最後に、必ず、ミンフィリアさんや、攫われた人達を助け出す事を誓って立ち上がった。

『持ち主の時は止まっても、世界の時は動き続けている』

マケルズさんが言っていた言葉を、思い出す。

次は、みんなで来ますと言い残し、私は、丘を後にしたのだった。

 

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