「アナタ! 仮宿へようこそでふっち! ノラクシアも元気なのでふっち?」
東部森林にある、シルフの仮宿に姿を現した私を、コムシオちゃんが大喜びで歓迎してくれた。
そして、同時に、共に暁でがんばっている筈の、ノラクシアちゃんの様子を聞いてきたのだった。
「……ごめんなさい……ノラクシアちゃんは……」
その問いに、私は言い淀みながら、抱えて来た大きな籠を、コムシオちゃんの前に差し出した。
籠に掛けられていた布を外すと、そこには、花びらを敷き詰めた中に、ノラクシアちゃんの遺体があった。
「……ふえ?……ノラクシアなので……ふっち!? どどど、どういうことなのでふっち!? ななな、なんなのでふっち!?」
それを目にして、酷く動揺するコムシオちゃん。
「コムシオ、何事なのでぶっち? んもう、さわがちいのでぶっち」
その時、騒ぎを聞きつけて、フリクシオ長ちゃまが姿を現した。
私は、詳しい説明を求める長ちゃまに、何があったのかを話し始めたのだった。
「……そうだったのでぶっち……ノラクシアは逝ってしまったのでぶっちか……」
「ノラクシア……」
そういって、涙を落とす長ちゃまと、コムシオちゃん。
私は、そんな二人にかける言葉を見つけることが出来ず、ただ、黙って俯くことしか出来ないでいたのだった。
「ノラクシアに砂の家へ行くのを奨めたのは、ワチシなのでぶっち……暁の方々や冒険者どのに、責任はないのでぶっち」
「冒険者どの……ノラクシアは、最後まで立派だったのでぶっち?」
少し落ち着いた長ちゃまが、私にノラクシアちゃんの最後を聞いてきた。
私は、ノラクシアちゃんが、最後まで、立派に戦ったことを伝えた。
「……よかったのでぶっち。きっとノラクシアも、お役に立てて喜んでいるのでぶっち」
そういって、長ちゃまは、私に礼を告げ、ノラクシアちゃんは、仮宿で弔う事を約束してくれたのだった。
「アナタ、いつか「テイコク」と戦う時がきたら、シルフ族はチカラを貸すのでふっち。ノラクシアの想いは、シルフ族みんなで紡ぐのでふっち!」
想いを紡ぐ…。
長ちゃまの隣で、怒りに震えるコムシオちゃんの言葉に、私は改めて、立ち止まることは出来ないと、決意を新たにしたのだった。