異世界の詩

見習い詩人のエオルゼア冒険記ブログ

伝説の機工師

「こんなところにも、帝国兵が潜んでいるなんて……」

教会の墓地に潜んでいた帝国兵を倒した私は、その姿を見下ろしながら、ここも安全ではない事を痛感するのだった。

 

「最近、どうも誰かに見られている気がするんだ……」

シルフの仮宿から戻った私に、マルケズさんがそう言って、相談を持ち掛けて来た。

視線と言われて、真っ先に思い浮かべたのは、同じ教会の修道女であるイルカムさんの顔だった。
以前、元気がないからと、マルケズさんに特性のジュースを用意したりして、彼への好意を抱えているのは知っていたから、てっきり、彼女の視線なのかと思ったのだ。

しかし、どうやら女性からの視線の様なものではなく、監視されている様な視線だと言うマルケズさんの言葉を受けて、墓地を調べて回ったところ、潜んでいた帝国兵に出くわしたのだった。

 

「帝国兵が!? やはり俺は監視されていたのか……? しかし、記憶のない俺を見張るとは……まさか俺の過去に関係が……?」

帝国兵に監視されていたらしいという事実に、訝しがるマルケズさん。
もしかしたら、マルケズさんではなくて、私を監視していたのかも知れないと伝えると、それはそれで腑に落ちないところがあるのか、マルケズさんは首を傾げていた。

隣で話を聞いていたイリュド神父さまも、帝国兵が居たことに驚きを隠せないでいる様だった。

 

「尋ね人を同時に2人も見つけることになろうとは。ゆくゆく、私はツイているな」

その時、突如、教会に入って来た人物が、声をかけて来た。
巡礼者かと思ったけれど、明らかにそんな雰囲気ではないその人の姿を、私は知っていた。

「こんなところで、帝国の影に怯えている場合ではないぞ。我々の手で暁を甦らせねばならん」
「そのためには……ガーロンド・アイアンワークス代表……伝説の機工師、シド! あなたの力も必要となる!」

そう言って、マケルズさんの顔を、まっすぐに見つめるアルフィノくん。

機工師……シド……?

その様子を見るに、アルフィノくんは、マルケズさんの事を知っている様だけど…。

「どなたか存じませんが、ここに居る男はマルケズと申す者。先の霊災で心に傷を負い、癒しが必要な状態です。どうか、そっとしておいてください……」

戸惑うマケルズさんを庇う様に、イリュド神父さまが、前に進み出て、アルフィノくんに応える。

「世界は今、あなたの力を欲しているのだ! こんなところで眠っている場合ではないぞ!」

しかし、アルフィノくんは、神父さまの言葉を無視するように、更に、マルケズさんに言葉を投げかけた。
その言葉に、なにかを感じたのか、マルケズさんが呻きながらも、なにかを一生懸命思い出そうとしている様だった。

 

そんな2人の様子を、不安げに見ていた神父さまだったけど、しばらくして、なにか意を決したかの様に頷くと、奥から、荷物を抱えて持ってきた。

「マルケズ……いや、シドと言ったかな。これを持っていきなさい。あなたのものだ」

それは、どうやら、マルケズ……シドさんの私物の様で、箱の上には、一振りのハンマーが置かれていた。
荷物を受け取ったシドさんを、慈愛を込めた表情で見つめる神父さま。

「シド……いっしょに暮らすうちに、あなたはきっと、名のある人だと予想はしていた。短い間だったが、息子が戻ってきてくれたようで嬉しかったよ。私はもう、充分に幸せな思いをさせてもらった……今こそ、あなたを、世界にお返しする時がきたのです……」

そう言って、シドさんの旅立ちを後押しするように告げる神父さま。
シドさんは、受け取った荷物と、神父さまを交互に見た後、アルフィノくんの方に向き直った。

「お前はいったい……」
「私の名は、アルフィノ・ルヴェユール。亡き祖父の意思を継ぎ、暁の血盟の一員として、蛮神、そして帝国と戦っている」

シドさんに、正体を問われたアルフィノくんは、誇らしげに答えた。

「……暁が襲撃された件は知っている……すでにエオルゼア中で噂になっているよ」

そう言って、アルフィノくんは、なにかを気遣う様に、私の方にも声を掛けて来た。

「蛮神対策の担い手として活動していた暁が墜ちた……その動揺は、各国上層部を揺るがしている。しかし、だからこそ、戦いをここで止める訳にはいかない」

そして、一息置いてから続けた彼の言葉に、私は息を飲んだのだった。

 

「イクサル族が、蛮神ガルーダを召喚した」

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