蛮神ガルーダは、数居る蛮神の中でも、特に好戦的で凶暴と言われる存在で、その力は、イフリートやタイタンを軽く凌駕すると言われている程だという。
そのガルーダが、暁が襲撃され、みんなの行方が判らなくなっているこのタイミングで召喚されるなんて…。
「言い換えれば、蛮神ガルーダを狩れば、他の蛮族達に与える影響も大きい……蛮神が、絶対的存在ではない証明になるのだからな」
どうやら、アルフィノくんは、この状況でも、蛮神狩りを遂行するつもりでいるらしい。
たしかに、クルザス地方で被害が出始めているという話だし、対処しなければならないのは判るけど……ミンフィリアさん達の事を放置して……ましてや、調査や協力もなしに事に当たるのは、かなり抵抗を覚えるのだけど……。
そんな私の気持ちも知らずに、アルフィノくんは、どんどん話を進めて行っていた。
「蛮神ガルーダが控える祭壇は、ガルーダが生み出した、暴風の壁に守られている。そこで、シド、あなたの出番だ。エンタープライズを探しに行く」
「……エンタープライズ……だと? もしや、それは……?」
アルフィノくんの言葉に、なにか思い当たるものがあったのか、シドさんが聞き返した。
「そうだ。シド、あなたの飛空艇だ」
「俺の……飛空艇……ああ……あ……」
飛空艇という言葉に、シドさんは、なにかを強く感じた様で、私達に少し待ってくれと告げて、教会の奥へと入って行った。
そして、ローブを脱ぎ、機工師と思われる姿になって、戻って来たのだった。
「エンタープライズ……そこに俺が居る……必要とされている俺が……」
そうして私達は、行方不明になったエンタープライズを探すため、最後に目撃されたであろう、黒衣森の北部森林へと向かったのだった。
フォールゴウトにある、双蛇党の詰所で、第七霊災直前に、エンタープライズがイシュガルド方面へと飛び去っていたという目撃情報を得た私達は、クルザス中央高地にある、アドネール占星台へとやってきていた。
アドネール占星台は、常に、星の動きを監視している場所で、この近くを通ったであろう、エンタープライズの記録も残っているに違いないと踏んだのだ。
しかし、そこで、頑なに他国を信用しようとしない、イシュガルドの人達の心の壁にぶつかったのだった。
「飛空艇の情報……それをアドネール占星台に求めるのは、いささかお門違いであろう」
アドネール占星台の台長と呼ばれる、責任者に、飛空艇の情報の提供をお願いしに行った時も、その返事は、非常に冷たいものだった。
かといって、このまま、すごすごと帰るわけにも行かない私達は、どうしたものかと頭を悩ませていた。
そんな時、ひょんなことから、イシュガルドの四大名家のうちの一つ、アインハルト家のフランセル様に、私は会う事が出来たのだった。
「薄雪草」
アドネール占星台にいるとある人から、特別な合言葉を教えてもらっていた私は、フランセル様にその言葉を伝えた。
それを聞いたフランセル様は、驚きの表情を浮かべた後、安心した様に笑みをこぼしたのだった。
「薄雪草……この地が氷に閉ざされる前、母上が好んでいた花の名だ。どうやら、キミとは安心して話せるらしい」
そう言って歓迎してくれるフランセル様に、私は、とある事件でアインハルト家に異端の嫌疑がかけられている事を伝えたのだった。
「僕に宛てた荷物から⻯眼の祈鎖が……!? そうか……恐れていたことが、ついに……」
竜眼の祈鎖というのは、イシュガルドにおいて仇敵とされる、ドラゴンを信奉する異端者が身に付けている装飾具の事。
それが、アインハルト家宛ての荷物からそれが見つかり、同家に異端の嫌疑がかけられているのだった。
「だが、僕は違うんだ……一族の皆だって……最近の異端者騒動はおかしい。誰かが、アインハルト家を陥れようとしている……」
そういうフランセル様の言葉に、嘘は感じられなかった。
それを裏付ける様に、自分が窮地に立たされているにも関わらず、私がイシュガルドにやって来た理由を知って、協力を申し出てくれたのだった。
「しかし、異端者の嫌疑を受けた身では、言葉のひとつも通せない……かわりに、砦の北にあるキャンプ・ドラゴンヘッドを預かる騎士、オルシュファンへの紹介状を書いてあげよう。彼は、四大名家の中でも傭兵や冒険者の受け入れに積極的なフォルタン家の騎士で……僕の親友だ。きっと、キミの力になってくれるよ」
そうして、紹介状を頂いた私は、キャンプ・ドラゴンヘッドへと向かったのだった。